絶望に塗れた世界でも、
- アーティスト: 踊ってばかりの国
- 出版社/メーカー: mini muff records
- 発売日: 2011/11/02
- メディア: CD
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「踊ってばかりの国」は4人編成バンド。
その内訳はVo.&アコギ、Ba、Gt、Dr。前作の1stアルバム以降、ギターが1人脱退し、4人体制としては初のアルバムとなる。
その結果、より彼らの音楽性がぎゅっと詰められて濃いアルバムとなった。
前作のレビューでは、
http://d.hatena.ne.jp/chairmanzx/20110108/1294506744
と、危うい"ゆるさ"にグイグイ惹かれるとレビューしているが、
今作ではこのバンドの世界観が抱えている闇が顕在化された格好になっている。
ギターが抜けたことでバンド内でのフィルターが減ったために、バンドを率いる下津光史の世界観がよりダイレクトに現れたようだ。
しかしながら古臭いけど新しい方向性、フォークやポップ、サイケデリックを再解釈系の音楽だというあたりは今作でも健在。
つまるところ、ゆらゆら帝国好きは必聴。
とてつもない闇を抱えているにも関わらず、ゆるい。
そのうだるような”ゆるさ”は、何とも言えないけだるさを誘う。
だがそのけだるさは私達の中に必ず眠っている(もしくは感じ取る)ものだ。
だが共感をするというよりも、なんだか惹きつけられてしまうと言うほうが適切。
<妬んでいた><死んだって止まらないよ><生きたくもないし、死にたくもないよ>
<近くには 君の死骸が居たのさ><殺すよ><疎遠で亡くなるよ>
<君の目は 死んでたわ><寂しくなると死にそうだ><殺しあうよ>
<声をもらすと殺されるわ><「死んでしまえ」>
なんと殆どの曲で、死ぬ・殺すなどのネガティブワードが続出する。
まるで深淵を垣間見るかのよう。とはいっても音楽がゆるい、ふわふわしたもののためシリアスさにはどうにも欠ける。
歌詞に自分への皮肉があるのに、音楽と歌詞の間ですらも皮肉が存在する。
だからこんな恐ろしい歌詞でも聴けてしまう。
いや、聴かされてしまう。
その感覚は、名曲「空洞です」にも共通するものがあると思えるほどだ。
雰囲気の意味ではどれもオススメだが、
私のオススメ曲は、1,4、7,9、10,13
アルバムの題名曲である1.「世界が見たい」は淡々とした明るさもあるが、どうしようもない悲哀も垣間見える名曲。
<ドカドカドカドカやっている 水色のヤツは>と述べられるアメリカへの憧れを持つ日本。<アナタになって世界を見てみたいよ>と憧れを語る。
だが、今の状況をかんがみるとそのアメリカへの憧れすらも皮肉だと思える。
とにかく聴いてみてほしい↓
世界が見たいはここから↓
http://www.youtube.com/watch?v=_pRWyWLF2SI
4.「言葉も出ない」は、曲調だけ聴けばなんとも郷愁的な「良い曲」のイメージをもつが、歌詞の内容はとんでもない。
<生きたくもないし 死にたくもないよ>
<また笑って会いましょう 生きてたら…><言葉も出ないだろう 死ぬんだから>
諦めのあまり、言葉も出ない。
7.「EDEN」は<今はイカサマの時間だね バカは騙されるよ><疎遠で亡くなるよ>とあるように、震災以降の原発事故に関して想起される曲。
うーん皮肉です。
あと、意外とギターソロがかっこいい曲(笑)
9.「よだれの唄」や10.「悪魔の子供」はシングル作品だが、アレンジされて収録されている。雰囲気は変わっているのでシングルですでに持っている人でも楽しめる。
9.「よだれの唄」途中のアップテンポへの転調はヤバイ。
悪魔の子供(シングルバージョン)はコチラ
http://www.youtube.com/watch?v=8127HPlsdig
13.「セレナーデ」。これは問題曲(笑)
<黄色い空にミイラが毒を吐き><「死んでしまえ」とつぶいやいた 思ってもいないのに>
<引きこもりの少年が曲を書き><売れてみてつぶやいた 嘘になる>
さて問題です。この2つのアーティストは誰でしょう?
…言わなくても分かるとおもいますが、某ミイラズと某かまってちゃんだと思います。
でもアルバム一番のアップテンポな曲でノリノリになれてしまうのもまた面白い。
オブラートに包むことを放棄したような歌詞。
徹底したシニカルな世界観。歌詞と音楽のギャップ。
ディープな音楽を是非聴き入ってほしい。
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1. 世界が見たい
2. !!!
3. going going
4. 言葉も出ない
5. ドブで寝てたら
6. 僕はカメレオン
7. EDEN
8. 反吐が出るわ
9. よだれの唄(リアレンジ)
10. 悪魔の子供(アコースティック)
11. お涙頂戴
12. 何処にいるの?
13. セレナーデ