ブラインドネス


突然ある日本人男性(伊勢谷友介)の視界が白くなり、視力を奪われた。そしてその病気は接触者から接触者へと瞬く間に拡がっていく。
原因不明ゆえに防ぐ手立ての無い政府は、病人達を隔離する。その隔離施設の環境は政府の管理が無く劣悪な環境で、そして極限の中、狂気と暴力が横行しだす。
しかし、その中にたった1人だけ見える女(ジュリアン・ムーア)がいた…



観賞日

2008年12月11日



【78点】










「全世界、失明」というキャッチコピーの映画。




これだけ聞くと、全世界を巻き込んだパニックもののような印象を覚えるかもしれない。主人公が医者かなんかで、なんとかして病気に有効なワクチンを苦労しながら生み出すようなヒーロー的物語を想像する方もいるかもしれない。


だが、今作の主題はそういった壮大な物語というよりも人間の心理を描いた点にある。


つまり、「眼が見えない」という極限状況下での人間の心の闇を描いた映画だということだ。
















前半は正直見ててキツい。かなりどぎつく人間のモラルの崩壊が描かれるからだ。
人間の本性が暴かれていくかのよう。”見える”ことで保たれていたものが、見えなくなることで剥がれていく様相。ぬるくはなくハードに表現する。



でも目を背けてはいけない。






















物語の中で鍵になるのはジュリアン・ムーア演ずる女性。

なぜか彼女はこの失明する病気に感染しない。
しかし夫が心配なので、見えないフリをして施設に入った。






だがこの状況が彼女にプレッシャーを与える。見えるものが只1人。つまりこの状況下では彼女が圧倒的にマイノリティ。

私達観客も見えているために、彼女に感情移入せざるを得ない。このあたりの演出がなんともこころにくい。



なぜ彼女はかからないのか?この病気は一体なんなのか?この映画はそういった科学的なところではなく、人間の深い部分に突っ込んだ映画。そういったことは気にせず観てもらいたいシチュエーション映画。

そもそも人間に治せない病気など今現在いくらでもあるのに答えを常に求めるのはナンセンスだ。
















しかしこの映画の一番大事なとこは見えなくても゛みえる゛ものなんだと思う。



この映画の舞台が何処の国かは明示されない。役名もなし。色々な人種、職業の人達が¨ただ¨いるわけだ。



しかし、目が見えなければ人種、職業などは関係が無い。
一番大切なのは人間として中身。



見えなくても”みえる”ものが一番大切なのでは?



非常に道徳的で、考えさせられる映画。
ただ、それだけに覚悟は必要。

もしも自分がこうなったら… という考えをめぐらせた方には是非観てほしい。

きっと新しい考えや想いが生まれてくるはずであろうから。