この物語は"奇跡"にして実話。南アフリカの元大統領ネルソン・マンデラにまつわる話。
1994年マンデラ大統領が当選し、黒人差別にひとつの終止符が打たれたと思われたが、まだ白人と黒人の軋轢は残っていた。
マンデラは、赦しによって国を変えようと考える。白人主体のラグビーの国代表チームを支援、国が一丸となることを願う。そして、95年自国開催のラグビーワールドカップが始まる…
観賞日3月16日
【80点】
もっと高い点数でいいくらいの映画ですが、展開的には見え見えだったのでこの点数に落ち着きました。
イーストウッドはまたもや名作を生んだ。今回は綺麗な作品。
この実話は、良く出来た物語だ。こんなのは有り得ないと疑うほど。しかし、有り得ないからこそ奇跡だった。
マンデラを演じるモーガンフリーマンには力強さがある。そしてうさん臭さがあるような単なるヒーローではない。
それよりも『友』だと言える。
独善ではない指導者がスクリーンには映る。
モーガンはマンデラが愛された理由を見事に分からせてくれた。その空気感で。
この物語に監督が焦点をあてたのはあるテーマ。それは"赦し"だ。
白人はこの時代黒人を恐れた。アパルトヘイトの仕返しをされると考えたためだ。しかしマンデラはそうはしなかった。
まず赦し、敵を味方にしようとした。彼にとっては黒人も白人も全て同じ国民だった。
赦しこそが平和の一歩で、それが容易ではないことは誰もが知っている。日中間の問題を見ても良く分かることだ。
凄惨な過去からくる憎しみ、怒りは拭い難い。
平和・和解は、諦めて不可能だと言うのはたやすい言葉だ。だが、この作品はそれを信じさせてくれる力を持っている。
題名の元になったのはマンデラが心の支えとしたひとつの詩。その中には
「私は我が運命の支配者、我が魂の指揮官なのだ」という節がある。
怒りも憎しみも乗り越える力強さが此処にあったことが見て取れる。
この映画は良い映画というよりも"善"い映画なのではないか。
観た後、素晴らしい爽快感を覚えたのは久し振りだった。そういう映画だ。