これはマサチューセッツ州ローウェルにいたボクサーの兄弟の、実話をベースとした物語。
兄ディッキー(クリスチャン・ベイル)は、かつて伝説のボクサー、シュガー・レイからダウンを奪った程の有能なボクサーだったが、今では怠惰な生活で虚栄心を振り散らす堕ちたトレーナーになっていた。
一方で父親違いの弟ミッキー(マーク・ウォールバーグ)は、ボクシングを兄から教わったが、トレーナーの兄やマネージャーの母親アリス(メリッサ・レオ)の束縛や無理な試合の取り決めのせいでどうにもスランプに陥っていた。
そんな中で出会ったシャーリーン(エイミー・アダムス)が、ミッキーを口うるさい家族から引き離して立ち直らせようとするのだが…
観賞日
2011年4月7日
【78点】
実在したボクサー、「激闘王」ミッキー・ウォードの物語。
アカデミー賞5部門にノミネートされ、2部門に輝いた今作は単なるボクシング映画ではなかった。
むしろこの物語が主軸としているのは、家族愛・恋人愛・兄弟愛だ。
それはふんわりとした生暖かいものではなく、それぞれが感じているんだけれども各々の生き方のあり方のせいで刺々しくなる。
意見の違いで、家族愛と恋人愛がぶつかったり。
それらの感情が丁寧に描かれることで、単なるサクセスものではなく仕上がっている。
そんな主軸となっている「愛情」をスクリーン上で表現した役者達は素晴らしかったと言わざるを得ないのです。
中でもアカデミー最優秀助演男優賞を獲得した、ディッキーを演じたクリスチャン・ベイルは役者魂そのもの。
歯並びを変えて、毛髪を抜き、13kg痩せた彼はスゴイの一言。
さらに、いつでも減らず口をたたきつづけるという異色のキャラ(実際に映画同様のカラフルな性格らしい)を演じきったというのもびっくりだ。
『バットマン』シリーズで演じるバットマンとは全く違う顔をみせている。
そして、もう1人、
アカデミー助演女優賞を獲得した、母親のアリスを演じたメリッサ・レオも素晴らしい。というか、怪演だった。
9人の子供を抱える母親だけあって、すさまじく支配的なゴッド母ちゃんで、自分の思い通りにいかないと激高することもしばしば。
しかし、9人の子供を抱えている以上強い母親で子供達を守らなければという思いが強かったのだろう。そういう性格になったのも納得できるが、あまりにも自己中心的側面が強すぎるきらいがある。観ていてけっこういイライラしたり。
勿論主役のミッキーを演じて、見事ボクシングシーンを演じたマーク・ウォールバーグ(『ディパーテッド』、『猿の惑星(リメイク版)』が有名)も外せない。
制作が難航して4年以上トレーニングし続けたこともあって、「役者のボクシングシーン」ではなく手に汗握る「ボクサーのボクシングシーン」になっていたような迫力。
そして、ミッキーの恋人役シャーリーンを演じたエイミー・アダムス(『魔法にかけられて』、『キャッチ・ミー・イフ・ユーキャン』など)も面白い演技をしていた。
シャーリーンはとても気の強い女性で、色々と汚い野次を飛ばすミッキーの家族・母親にも真っ向から対抗する。
というかこの辺が映画を観ていると汚い罵り合いで胸くそ悪い部分なのだが、ある意味それぞれの愛情が真っ向からぶつかっている訳で何だか不思議な気分になる。
この4人が主軸となって素晴らしく重層的な人間ドラマを構成する。
従来のボクサー映画は基本的に主役にのみスポットが当たるような構成になるので、こういった映画は珍しいとも思われる。
そして
これらの感情を全て乗せて物語は最後のボクシングシーンへと向かっていく。
バンドものの映画のラストのライブシーンと同様で、役者が台詞を語らずともここまで物語を観てきた私達観客には十分理解できる。
人間ドラマが主軸とここまで述べてきたが、やはりボクシングのシーンも必見。
ラストはマジで手に汗握る、いわゆるとことんリアルな”ガチ”な試合。
イライラとするような人間が多く出てくるので、最後のこの展開の爽快感が増した。
安定感のあるアカデミーもので、
スカッとしたい方にはオススメの1本だ。
予告編はコチラから
↓
http://www.youtube.com/watch?v=asY8M1dT5ps
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