人里離れた山で暮らす克彦(役所広司)は、木こりとして息子と2人暮らしをしていた。
ある日、仕事の途中に映画の撮影で山に来た青年・幸一(小栗旬)と出会う。ひょんなことから映画の撮影に巻き込まれた克彦はだんだんと幸一と親密になっていく。
現場でなかなか上手くいかないことに悩み続けている幸一。
そして克彦は関係がうまくいっていない自分の息子・浩一(高良健吾)と幸一を重ね合わせるようになり…
観賞日
2012年2月13日
【78点】
『南極料理人』、『このすばらしきせかい』の沖田修一が監督した映画、『キツツキと雨』は温かい映画だった。
すべてが温もりに溢れていた。
ストーリーは単純明快。正直言って意外なところはなかった。
しかしストーリーの中で様々な対比が存在し、単純なストーリーながらも2時間半の長尺を感じさせないつくり。
爆笑とはいかないまでも、クスリとさせられるシュールな画や場面が随所に盛り込まれているのもこちらの心を落ち着けてくれる。
この映画はゾンビ映画を撮っている監督と木こりが出会うというストーリーなのだが、
”ゾンビ”映画を撮っているという所がなかなかミソになっている。
ゾンビ映画というと中々殺伐としたイメージがあるが、
ゾンビ役に一般のエキストラを使ったりする点を考えると題材としては非常に的確だったと思う。
映画を撮るという行為の中で村人とスタッフの一体感が生まれ、まるでスクリーンの外にまで伝わってくるかのようだからだ。
さらにほんわかとした物語とゾンビ映画というギャップも面白い。
ゾンビ映画にありそうな残虐表現もないのでご安心を(笑)
やはり光るのは主人公を演じた克彦を演じた役所広司。
『13人の刺客』で「斬って斬って斬りまくれぇ!!」と目をギラギラさせて決め台詞を叫んでいたのに、
今回は木こりの気のよさそうなおじさんを見事に演じている。
会話の食い違いなどから生まれる、ときおりピタッと一時停止する表情も何とも言えない面白さ。
口下手な私としては、もう1人の主人公の幸一になかなかどうして感情移入してしまった。
設定が25歳と近いこともあり、より親近感がわいたのだが、親子ほどの年の差がある人との温かみのある交流には憧れる。
もちろん今後社会人として仕事をしていくうえで様々な年代の人と出会っていくのだろうが、
こういったある種の絆のような爽やかな出会いがあったらいいのになぁ…としみじみ。
2人の掛け合いもこの映画を盛り上げる。
かなり離れた距離からカメラ視点で微妙な距離のある横並びの2人を撮影するシーンが印象的だが、
これも2人の掛け合いの面白さを助長する。
「木こり」の克彦と「監督」の幸一という全く違う2人だけに時たま会話が食い違う。
その食い違いが微妙な距離を表しているようで面白いし、食い違いが苦々しいものではなくクスリとできるものだけに観ていて微笑ましい。
主題歌も映画の余韻に浸れる温もりたっぷりの主題歌。
昨年、アルバム「エピソード」という日常を切り取ったかのような快作を生み出した星野源が担当した。
この映画を観て、主題歌がいいなと思った方は星野源のアルバム「エピソード」をぜひ借りてみてほしい。
きっと同じ雰囲気を感じ取れるに違いない。
星野 源/フィルム【MUSIC VIDEO &特典DVD予告編】 はこちら↓
http://www.youtube.com/watch?v=zEo3WyL3Lsk
大作とは決して言えるわけではないが、静かな快作のひとつであることは間違いない。
スピード感のある映画や衝撃度を望む方には少々退屈にうつってしまうかもしれないが。
本来はもっと複雑であろう現場の表現をわかりやすくして、
木こりと映画監督の関係を描いているだけに全編に渡り安心して観ることのできる映画。
疲れた時や癒されたい時に絶大なる効果を発揮してくれそうな映画だろう。
予告編はこちら↓
http://www.youtube.com/watch?v=rNLQPe4HvxY
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