2018年映画ベスト10

2018年のトップ10の詳細です。


10位「ハッピーエンド」

〇「愛、アムール」のミヒャエル・ハネケ監督による映画。
トップ20に選んだ中でも最も異質かもしれない作品。


〇とてもサスペンスチックや、とにかく生々しさ・不気味さ・が残る。
ラストの余韻…というか残し方が激烈。そこのインパクトで年末まで残っていた感じです。



9位「さよならの朝に約束の花をかざろう

〇「あの花」など数々で知られる岡田麿里、初の監督アニメーション作品。

〇見事な色彩から繰り出される物語は、ダイレクトに涙腺を崩壊させる…!
数百年の命を持つ「ヒビオルの一族」、その出会いと別れの物語――
という時点でもう嫌な予感(良い予感)しかしない



8位「search/サーチ」

〇娘が突如姿を消し、それを捜索するという父親の姿を描く作品。
今年最大のダークホースだった1本。
まだまだ映画というジャンルの拡大性があることを示してくれた作品。

すべてPC上の画面の中で展開するという特異性、
大スクリーンでPC上の画面で全く新しい体験だった。

〇ただこの作品がダークホースと足りえたのは、
アイディアの一本勝負のみの作品だっただけではなく、
一筋縄ではいかないストーリー展開があったからこそ。

「映画的」カメラだったら気づいてしまいそうな事も、
この映画のやり方だからこそ中々気づけない、というストーリーの見せ方もならではだ。

各種デバイスの使い方や人間関係の見え方が生々しい。




7位「カメラを止めるな!

〇今年話題をかっさらったといえばこの作品。
点数がやたら高いという印象で、8月頭に作品に対しての全くの事前知識無しで観たところ、やられた!という感じ。


〇まだ観てない人は、とにかく何も知識を入れずに観てほしい。


6位「万引き家族


〇「海街diary」「三度目の殺人」など、もはや毎年話題作を投下してくる是枝裕和監督作品の最新作。

ヒリヒリとしている空気のある作品が多いが、今作は、さらに独特の空気感が際立つ。

「家族」それぞれの持つエピソードの要素が複雑に絡み合い、
人と人の関係性が炙り出されていくさまは圧巻。
海街diary」や「そして父になる」、「誰も知らない」で幾度となく描かれてきた”家族”という題材の集大成かのような作品。

〇映し出される映像の陰影やあえて語らない表情などなど、画として映し出されるすべてが物語を語っていてワンシーン・ワンシーンが情報量が重いこと、重いこと。
それぞれのキャラクターが立っているからこそこれだけの重量感を生み出せるのだろうか。

〇そして、「是枝監督」×「樹木希林」の最後の作品でもある。
樹木希林さんの存在感、毎回それを観るために映画館に通っていた気もする。
なんだかまだ実感がありません。





5位「ブリグズビー・ベア

〇25年間、外と遮断された小さなシェルター内で教育ビデオ「ブリグズビー・ベア」がほぼ唯一の娯楽といえるような世界で育った青年ジェームス。
だが、突如警察が踏み入り、ジェームズは保護される。
両親だと思っていた2人は、25年前にジェームスを誘拐し、隔離して育てていたのだった。突然訪れた「外の世界」に困惑するジェームス。
そして、ジェームズは「ブリグズビー・ベア」の続きを自ら作ることを決意する…

〇「スターウォーズ」シリーズのルーク・スカイウォーカー役、マーク・ハミルも出演する今作。
作中内作品の「ブリグズビー・ベア」は、SFのテレビシリーズのオマージュや独特のチープさがたっぷりで思わずクスリとさせられる。


〇「初めて外の世界を知るオタク青年が、自分を培った物語を捨てるのではなく、その物語を自分の中で昇華することで成長していく」という物語にはどうしても自分自身を重ね合わせてしまう。
とかく個人的には、自分自身が主人公のジェームズといま全く同じライン上にいるので、最終的にはこうなりたいと改めて背中を押された。

変わりたいと一歩を踏み出す行為は、必ずしもドラスティックなやりかたではなく、
自分の中にあるもの、自分の握っているものから生み出され得るということ。

全く身分は違うものの、”吃音”という自分の欠点を消すのではなく自分の中で飲み込んで前へと踏み出した、「英国王のスピーチ」を想起させる作品だ。



4位「リズと青い鳥

〇アニメ「響け!ユーフォニアム」シリーズの映画化。
TVシリーズは「吹奏楽(部)の熱量」が印象的な作品だったが、
今回の映画はこれまでのメインではなかった2人のキャラクターの関係性にスポットが当たった作品。
そして、全くカラーの違う作品となった。

監督は、「映画けいおん!」「たまこラブストーリー」「聲の形」といった作品を手掛けてきた山田尚子
映画になった時の「映画」的手法の見事さはこれまでも証明済みではあるが、今回も完全にやられてしまいました。

リズと青い鳥」という童話。そこに投影される2人の少女の感情。
感情は直接的に表現されるものではなく、
童話のエピソードやキャラクターのしぐさ、光の具合、背景によって投影されていく。

その情報の密度…「万引き家族」などでも触れた部分に上映中、圧倒され続けました。

特にラストシーン。”青春の青さ”がどこまでもあと引く中、主題歌「Songbirds」が色を添える。










3位「スリー・ビルボード


〇アカデミー主演女優賞・助演男優賞を受賞した本作。
ミズーリ州のある町に設置された3つの広告看板、地元警察への批判メッセージを記したこの看板から波乱が巻き起こる…


〇読めない展開も魅力の本作だが、なんと言っても本作は主演のフランシス・マクドーマンドの存在感!
力強い母親像、一度見たら忘れることはないと断言できる過激なキャラクターだ。
その他のメインキャラも曲者ぞろいでかつ、そう来るの?というストーリーも相まって、ジャンルを一括りにできない面白さ。
(公式HP上はクライム・サスペンスだが、ブラックなコメディ要素もありありで)





2位「リメンバー・ミー


〇ディズニーのピクサースタジオ19作目、アカデミー賞長編アニメ受賞作品。
メキシコの死者の日を題材として「家族のつながり」を描いた作品。

完璧過ぎる脚本に完敗(乾杯)。
こんなん泣くにきまっとるやろ…という落としどころの狡猾さ。
(逆にこの完璧さが嫌な人もいるかもしれませんが…)


〇「現世に誰も覚えている人がいなくなったときに消えてしまう」という設定。
誰しもが子供の時に思う「どうして死者を弔うのか?」という素朴な疑問に答えるようなこの物語が、ピクサーから全世界へと伝播すること、それ自体が非常に意義がある。


〇常に発信/更新され続けるピクサー、2019年はいよいよシリーズとしては9年ぶり、1作目からは24年が経った(!)の新作「トイ・ストーリー4」が公開となる。
正直、傑作の3作目までで「トイ・ストーリー」といわれる物語で語れることは尽くしたのではないかと思うだけにどのようなアプローチをするのかが楽しみ。








1位「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」



〇そして、1位はこちら。
まさか4歳の時にコミックでみた宇宙スケールのストーリーが映画化されるとは…

という四半世紀の思い入れもありつつ、
娯楽映画として、「スターウォーズ/帝国の逆襲」「ダークナイト」のような作品と同じくしてマーベル映画シリーズの中での立ち位置を圧倒的に確立して、
想像よりも見事に上をいかれてしまったことに対しての1位です。


〇これまでマーベル映画は2000年の「Xメン」以降劇場で観てきましたが、ことマーベル作品の映画世界、マーベルシネマティックユニバース(MCU)に限っては「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」を観た時に、「これはもう全員集合ものは厳しいかもしれないな…」と思ってしまっていました。

だが、今作は「エイジ・オブ・ウルトロン」の鬱憤を晴らすかのようなクリティカルな出来。隙が無く、各作品で出てきたキャラの見せ場がありつつ、
そして最も大事なのは「サノスというキャラクターを描く」ということに焦点が置かれた点。



〇そして、2019年は「キャプテン・マーベル」から現体制の完結編「アベンジャーズ/エンドゲーム」が公開される。

一体どんな完結を迎えるのか。
「終わりと始まり」を常に繰り返してきたマーベルが2019年に打ち出す一手から目が離せない。