別離


イランの都市テヘランに住むシミンは、11歳の娘テルメーの将来を考え国外へ出ることを計画していた。しかし夫ナデルはアルツハイマーを患う父を置いてはいけないと反対。
夫婦の意見は食い違い、離婚寸前までの状態に陥ってしまう。

シミンは実家に一旦帰省することになり、ナデルは父の世話をする人間を雇わざるを得なくなる。そこでシミンの知り合いの“つて”からラジエーという子連れの女性を雇うことになる。だが介護面や金銭的な面など様々な問題からラジエーは辞めると切り出すが、結局続けることになってしまう…

観賞日
2012年4月10日


【78点】







2011年度アカデミー外国語映画賞に輝いたイラン映画、『別離』。
イランの人々の特別すぎる物語ではなく、日常を描き、そこで巻き起こってしまった物語を巧みな脚本で描き出した作品だ。







この手の映画は観ているだけで勉強になる。普段触れることのないイランの中流家庭の暮らしに触れることができるからだ。
ここでは現代のイランに根づく、社会的問題が露わになっている。


特に介護ひとつとっても宗教的な理由によってできないこともある、という点には驚かされる。








イランの現状を描きつつ、この映画の核となってくるのは、「見栄による小さな嘘」だ。
それらが重なってくることで事態は困窮化し、泥沼へと突入していく。
誰が悪い、当人たちはそう決めたがるがそうではない。



誰もが悪い上に、誰も悪くない。だが皆が早く「決めたい」ゆえに過ちを犯す。

その様子があまりにも歯がゆく、心地が悪い。個人的には観ていてイライラで拳をギリリと握りしめてしまった。

しかしそのイライラこそがこの映画の神髄。
圧倒的な人間味を克明に描き出したことこそがこの映画が批評家先生たちに評価される理由なのだろう。