ワンルーム叙事詩/amazarashi

切ない「毒」を吐き、一筋の「希望」を切望する

ワンルーム叙事詩

ワンルーム叙事詩



amazarashiは青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心とするバンド。
今年メジャーデビューして、今作がメジャー2作目のアルバムだ。

ほとんど露出情報が無いこのバンド、公式サイトには殆どバンドに関する情報が無い。

だが、そんなことは楽曲を聴けばどうでも良くなる。













特徴は、

バンプの「THE LIVING DEAD」のような圧倒的で、鮮明な世界観。
聴いているだけで、世界観が広がってくる。


また、絞り上げるような声で、真っ直ぐに歌い上げるボーカル。
世界観に相まって、その新に迫る感が倍増される。


そしてなんといっても凄まじい詩。とんでもない毒をときどき吐き出す。
「爆弾の作り方」(1stアルバムより)なんて歌を出すバンドが他にいるだろうか。
しかもおちゃれけているわけではなく、真剣に。







前述の1stアルバム、「爆弾の作り方」で、正直驚かされた。
その、切なさと圧倒的リアリティに。ていうかここまで非リアにぴったりな歌があるのかと。その歌声はどんどんと流れ込んでくる。
















今回のアルバムでは、全般的に冬をイメージさせる楽曲が中心で、

絶望という状況から一筋の光が見えてくるような歌が多い。








しかもその絶望はけっこう深い。

冬に特徴的な幻想的空気のある曲調だからこそ、切なさが大きくなる。

でも聴きたくなくなるような重さではなくて、
メロディーが幻想的で綺麗だから聴いてしまう。

そして、そこにあるメッセージに勇気付けられる。

自分がその深さの絶望に一度でも、一瞬でも対面したことがある者なら、
きっと何かを感じ取る筈。

いや、人間が生きる上で必ず対面するだろうものがここにあるのではないかとさえ感じてしまう。












オススメは、
1,2,5,7












1は、アルバムで最もアップテンポなナンバー。

自分の生に疑問を抱きながら生きる人間へのメッセージか。

生きていること自体が奇跡であるという曲。まあJ-POPでも良くある題材だが、
個人的にはどこか重みが違う。何故か説得力がある。

それはまるで、バンド藍坊主やアジカンが持つものと同じ魔力。

「奇跡」という曲名がよくあるものだからこそ、気合の入っている曲。
桜やanswerといったメジャーな曲名で中途半端なものをリリースするほど愚かなことはないと思う。
そう思うから個人的にはありがちな曲名をリリースするときほどそのアーティストに曲に注目する。










2.


クリスマス。普通はラブソングであろう。

この曲もそれを思わせるかのような、雪がシンシンと降り積もるのがイメージできるイントロで始まり、終始クリスマスソングらしさを漂わせる。



だが、この歌はこう終わる。
<さあ祈ろうぜ世界の為に 救いようの無い僕らの為に>
<見てみろよ酷い世界だろ 今日は美しいクリスマス>

背反する二つの要素が交じり合って、クリスマスの美しさを引き立たせるが、
やはり背後にはどことなく切なさが。


PVも凄いの一言。是非聴いてみて。
ここから視聴。












5.
この曲はとんでもない曲だ。



↓サビ抜粋
<燃えろ 燃えろ 全部燃えろ>
<この街の美しい朝日も そいつに不似合いな思い出も 再戦の明日に勇む夢も>
<雨にも負けて 風にも負けて 雪にも夏の暑さにも負けて>
<それでも 人生ってヤツには負けるわけにはいかない >
<一人立ち尽くす そこはまるで焼け野原>




そう、過去への決別として自分の部屋に火を点けている。
放火、そんな歌が今まであったろうか。


だが、そこには、全てに負けても、最後に残ったものには負けたくないという生きる意志。
そんなメッセージが衝撃とともにこちらに突き刺さる。


ここから聴いてください











7.
積もっていく雪の曲。

こちらも2.と同様に雪の降りしきる様子が想起できる仕上がり。

雪に願うのは、明日の景色を、これからの自分をやりなおすこと。
過去の自分を真っ白に染め上げてほしいという切望の歌。

とても冬に似合う。ていうか心が寒いときに聴きたくなる。







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1. 奇跡

2. クリスマス

3. ポルノ映画の看板の下で

4. ポエジー

5. ワンルーム叙情詩

6. コンビニ傘

7. 真っ白な世界