垣間見える、「闇」を背負う覚悟
- アーティスト: amazarashi
- 出版社/メーカー: SMAR
- 発売日: 2011/11/16
- メディア: CD
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amazarashiは青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心とするバンド。彼らについては多くが謎に包まれている。
ちなみに前作のレビューはこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/chairmanzx/20101210/1292005462
今年初頭にミニアルバム「アノミー」をリリースし、そして今作が初のフルアルバムとなる。
聴く者を圧倒する圧倒的な歌詞世界は今作でも健在だ。
今までも「爆弾の作り方」、「ワンルーム叙事詩」(放火)、「アノミー」(殺人)などとてつもない"闇"をはらんだ歌を送り出してきたが、それらの闇が積み重なった上に立つような作品となった。
実は今回のアルバムでは今までの毒々しさは少しマイルドになった印象がある。だが、それは今までの作品の上にこのアルバムがあるからに他ならない。
これまでは限りなく絶望で終わる曲も少なくなかった。だが今作ではその闇を受け入れて前へ進もうとするという姿勢がより強くなった気がする。いや、アルバムとして暗さから明るさへ、絶望から希望へと流れが向かっている。秋田ひろむ心境に何かしらの変化があったのだろうか。
その意味でいえば、より多くの人に受け入れられやすい音楽へとなったのかもしれない。
フルアルバムになったことで心配されたクオリティの面は、はっきり言って杞憂だった。どの楽曲もamazarashiらしく心に届いてくる。
それどころか彼らの説得性はさらに増した。
それは、このアルバムでAmazarashiが闇を背負い、歌にするような覚悟が垣間見えるためだ。
アジカンや藍坊主などが持つ歌詞に対する責任と重みがここにはある。安い言葉を吐くのではなく、一語一語を背負おうとする凄み。それがひしひしと伝わってくるからこそ私たちはamazarashiの歌に心を動かされるのだろう。
全曲オススメだが、今回は
1,2,3,7,9,12
について取り上げる。
まるで讃美歌のような暗く荘厳な1.「デスゲーム」からこのアルバムは始まり、私たちを驚かせる。いきなりamazarashi節が全開だ。
<ぼくらの首を絞めているのは おそらく無自覚な奴だ>
<悲観主義では逃げ出せない 時代のクローズドサークル>
<悪い奴は誰だ 悪い奴は誰だ>
とサビで唄われて、私たちは自分自身ではないかとグサグサと心に刺さってくる。
デスゲーム↓(多分すぐ削除?)
http://www.youtube.com/watch?v=ABiwJIlZarU
サビの切ないシャウトが印象的な2.「空っぽの空に潰される」は、悲しみに満ちたナンバー。
<虚しい時はどうすりゃいいの? 教えて 教えて>
<それに何を期待すりゃいいの? 教えて 教えて>
とはまるで全てが終わりに行き着くこの世界に潰されてしまうかのようだ。
「空っぽの空に潰される」↓
http://www.youtube.com/watch?v=xkWr-kECEKg
おそらくブレードランナーがネタにされているであろう、3.「古いSF映画」も歌詞に要注目。
1番は、ブレードランナーの話題から、2番では現在の世界から<僕らが信じる真実は 誰かの創作かもしれない>
<人が人である理由が 人の心にしかないのなら>
<明け渡してはいけない場所 それを心と呼ぶんでしょ>
と、嘘にまみれる世界のなかで自分の真なる心を明け渡すなと語りかけてくる。
<本日の東京汚染予報>などのフレーズは3.11以後だからこそより真に迫る楽曲だ。
「古いSF映画」はこちら↓
http://www.youtube.com/watch?v=pdwTV7Fhc8c
7,12.は明るいほうへと向かう新たなamazarashiのかたちだ。この後半の曲たちがあるからこそ前半の暗さとのギャップが生まれ、より完成度を増した。
<終わりがあるから美しい そんなの分かりたくもないよ>
<終わりはいつも早すぎる>
彼らが「終わり」というものに抗うのは珍しい。現実への諦めの中で一片の希望を願うようなイメージが強かった彼らだが、その先を求めるようになったということか。
今までの絶望の曲があるからこそこの歌詞も際立つ。
「未来づくり」も同様だ。この曲では唄い方もつらつらと厳しさを述べるような前半に比べて、やさしさに満ち溢れている。
歌詞カードの横にある詩も必見。これは歌に対する詩なので、さらに歌の歌詞世界を楽しむことができる。しかもこの詩も歌にできるレベルのクオリティ。
今やネットで歌詞をみることも可能になった世の中ではあるが、この詩は歌詞カードでしか見ることができない。その意味でamazarashiはCDに対して、ここでしか「見れない」付加価値を付けている。ぜひレンタルでも購入でも手にとって見てほしい。
そして初回版では「しらふ」という短編小説までついてくる。まるでamazarashiの歌詞世界と同様の重みを持っていて、やはりグサグサと突き刺さってくる。
初回版はまさに何度でも味わえる名盤だ。
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1. デスゲーム
2. 空っぽの空に潰される
3. 古いSF映画
4. 渋谷の果ての地平線
5. 夜の歌
6. 逃避行
7. 千年幸福論
8. 遺書
9. 美しき思い出
10. 14歳
11. 冬が来る前に
12. 未来づくり