痛みの中で、苦しくも歌い”続ける”
2012年2月15日
タワーレコード限定発売 WGC‐007
「それでも世界が続くなら」は、2011年にバンド名を「ドイツオレンジ」から事実上解散した後に結成された、
4人組ロックバンド。
2012年2月、「それでも世界が続くなら」として1stアルバム(タワレコ限定)となる本作が
タワーレコードインディーズチャートで初登場3位、そして1位を獲得した。
「それでも世界が続くなら」。
このバンド名だけでどことなく察しがつくが、歌詞が重要視されているバンド。
そしてその歌詞世界観は暗い。
だがただ救いがなく暗いだけではなく、まるでそれでも生きていくんだと言わんばかりに曲を終える。
小さな救いが存在する。
どこか同じような感覚を持つ人間の、日記を覗き見てしまったかのような感覚にも陥る歌詞。
<伝わることのない歌><きっと音楽じゃそれは無理だけど>
<言葉がほら 宙に浮いて 誰の心にも届かないのに ここにあるよ>
様々な曲の中で自らの歌を否定するような、歌の力を否定するようなフレーズがあるが、
それでも彼らは歌い、演奏する。
そのスタンスがとどのつまり、「それでも世界が続くなら」ということなのだろう。
音楽性としては、例えれば、
ART-SCHOOLっぽさが一番に挙げられて、
syrup16gの歌詞、そしてTHEラブ人間のような語りかけるようでいてソウルフルな歌い方が入り混ざっているような印象。
THEラブ人間が人間賛歌であるのに対し、こちらは全くの逆を行くような音楽性。
だが語りかける優しい歌い方は、ラブ人間にも通ずる。ある意味安心できる音楽だ。
<よかったなぁ><きこえていたらいいのにな><いいんだよ>
独り言のようなつぶやきで終わる曲もある。
それでいてノイジーなギターサウンドを織り交ぜたり、シャウトじみた歌い方も織り交ぜる。
このアルバムでは大きく分けて2つのタイプのサウンドがあり、
いわゆるTHEラブ人間と似ている弾き語りのような優しさを持つサウンドと、
それと比較すると音も歌い方もハードな疾走系サウンド。
弾き語りのような歌もサビでは激しくギターを歪ませることも。
このバンドのストロングポイントだと勝手に思うのは、
歌詞世界が重めなのに、サビにおいてはTHEラブ人間のような歌と同様のポップさをなぜか帯びている点。
頭にサビが残るのはまさしくポップさがどこかにあるから。
アルバムを通してでも聴きやすさがある。
オススメは、
1,4,5,7,8
1.「シーソーと消えない歌」は、優しげなイントロが印象的なナンバー。
まず最初の歌詞が<終わらないものなんて なくてよかったなぁ><君のその痛みも いつかちゃんと終わる>という時点で、
このバンドがどういうものなのか一発でわかる。
そして終いには、<消えない歌なんて なくてよかったんだなぁ>とすら言ってしまう。
↓シーソーと消えない歌
http://www.youtube.com/watch?v=Hyn7ntznJF8
5.「僕がバンドを組んだ理由」は弾き語り曲。
<今日も きっと世界が続くから 僕はバンドを組んで>
というように、このバンドのある理由が歌われる。
↓僕がバンドを組んだ理由(short ver.)
http://www.youtube.com/watch?v=R4JS8AYFOJ8
4.「参加賞」8.「ブラスト」は疾走系ロックナンバー。
けっこういい場所にこういう曲を置いたなぁという印象。飽きずにアルバムを聴ききれる。
特に「ブラスト」はここまでたまっていたモノを吐き出すかのように、疾走するナンバーなのでオススメ。
このクオリティで1050円は安い。というか9曲入りで1050円。
是非手に取って聴いてほしいサウンドだ。ジャケ買いでも十分OKと言えるシロモノ。
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1. シーソーと消えない歌
2. アンダーワールド
3. 戦争とイメージ
4. 参加賞
5. 僕がバンドを組んだ理由
6. ハイド アンド シーク
7. ヘイトミー ヘイトユー
8. ブラスト
9. 痛みの国のアリス