決意の先にあった「ベスト」
*ネタバレ満載です
初のベスト盤リリース後の、大規模会場を回るツアー。
それだけでもうこれまでのアジカンとは違うライブになる予感がしていた。
さらに3.11後に活発化したフロントマン後藤正文の活動。
これまで時代を背負い過ぎるほど真面目に背負ってきたことからもわかるが、
震災後に音楽への向き合い方をしっかり見つめ直したであろう彼の意識の変化も気になるところだ。
そしてその予感は的中することになる。
私自身、今まで4,5回アジカンのライブを観たが、
新木場やZEPP TOKYOなどキャパシティが2000程度の会場であったため、
これまでの4,5倍のキャパシティのある今回の武道館の雰囲気はひときわ異様だった。
その異様さが、これから始まるアジカンのベスト盤ライブをさらに加速させていた気もする。
ステージには旧型の箱型テレビが吊るされていたり、置かれていたりと意味ありげ。
これまでのライブでは演出云々というよりも、とにかく演奏を聴かせるスタンスであったため、気になるところ。
そして開演。テレビに明かりが灯る。
注目は、最初何から演奏するのかだった。
ベスト盤の最初の方か、それともアルバムで序盤に入っているような曲か、
だが実際はどちらでもなく「迷子犬と雨のビート」から始まった。
いきなり最近のシングル?と驚く間もなく、畳み掛けるようにライブでは鉄板の「Re:Re:」、「アンダースタンド」がくりだされる。
会場のボルテージは一気に上がる。
ここに「君の街まで」、「夜のコール」、「アフターダーク」とヒット曲がなだれ込む。
こんなに飛ばしていいのか!?と思わせるほどのセットリストだ。
ここでいったんスピードは緩まり、
「或る街の群青」、「ブラックアウト」と続き、なんと「真冬のダンス」が演奏される。
アルバム「ファンクラブ」の中でもそこまでの存在感があるわけでもないこの曲がなぜ演奏されたのか。
さらに後にライブではほとんど演奏されないミニアルバム「未だ見ぬ明日へ」から「融雪」までもが披露される。
演奏後にこの曲の思い出をゴッチが語った。
上京後、浪人時代新聞配達のバイトをしていた時の早朝、誰も足を踏み入れていない公園の雪、滑り台の雪、
寝っ転がってみた景色…
アルバム発売から5,6年経った曲のエピソードを話すのは珍しい。この曲がよほど思い入れがあったということなのだろう。
ここで気づく。このライブはベスト盤+ライブのベスト曲+ゴッチのベストなのだと。
「Re:Re:」や「アンダースタンド」「惑星」「新しい世界」はライブでは鉄板クラスの盛り上がり曲。
逆に今回、「真冬のダンス」「融雪」「海岸通り」などのレア曲はゴッチ自身のベストの中の曲なのだろう。
特筆すべきは、これらの曲が全て融合し、遜色ないこと。今のアジカンが演奏する今の曲として、
目の前に現れていたことだ。
楽曲を常に今のアジカンで鳴らし続けるスタンスに、やはり彼らはライブバンドなのだと再確認させられる。
だからこそ「リライト」も「ループ&ループ」も「君という花」も、何度聞いても新鮮な高揚感を覚えられる。
このあたりがアジカンとの出会いだった(アジカンを初めて意識した時期)だけに、思い出もひとしおだが、
どれもが”今の曲”として顕現していた。それとこの流れはやはり神のごとき流れであったと追記しておきたい。
演出も素晴らしかった。
意味ありげなテレビはやはり意味があり、様々な演出で使用された。
時にはPVが流れ、時には怪しく赤く光ったり、砂嵐を表示をしたり…
これまでのアジカンにはない演出の巧みさが光ったが、逆に巧み過ぎてスローな曲で全くノれなくなるという弊害もあった(笑)
実はこれらのテレビは実際に捨てられていたものをかき集めたものらしく、
それを使えるものに復活させるという試みはまさしく最近のゴッチの活動の旺盛さを端的に表しているかのようだ。
今回はほぼMCではゴッチの1人語り。
ときおり冗談も交えたが、震災がまだ終わっていないことを含めて、なかなかヘビーなトーンで話を展開した。
物販のトートバッグを三陸海岸のお母さんたちが作ってくれたこと、
津波で被害を受けた宮城にライブハウスを建設するための活動「東北ライブハウス大作戦」への募金活動…
そこにはベストを出してもっとアジカンを前に出していこうとするゴッチの決意が見える。
たった1人武道館でしゃべる男。
これまでのライブで「何話していいかわからない」と言っていたのはとは違う、
力強い言葉で喋っていた。
考え抜いた決意。それがにじみ出ていた曲がある。
「さよならロストジェネレイション」、「新世紀のラブソング」だ。
前者は、弾き語りで「原発なんていらねぇよ」というのフレーズを含む、語りが追加されており、
さしずめ「さよならロストジェネレイションver2011」になっていた。
これは元々2010年という設定でこの曲があるために、ゴッチ自身が今の気持ちを追加することによって
楽曲自体をアップデートしたのだろう。
後者は、ダブルアンコールのラストを締めた曲。
謎の弾き語りの曲(曲なのかも怪しいが、明らかに歌詞が固まっていたところをみると今後楽曲化もあり得そう)に続き、
まるでこのライブは決意と覚悟のライブだったんだ!言わんばかりの見事な締め。
途中披露された新曲「踵で愛を打ち鳴らせ」の、マーチングバンドをパワーポップに突き上げたような力強さも
今後の決意を感じさせた。
(Twitterでタイトルの大喜利大会が始まり、ゴッチが突っ込みを入れていたのが微笑ましかったが、まさか「かぼすで鯛を蒸しあげろ」というタイトルになっていたとは…笑)
これは今年出そうなニューアルバムに期待しちゃって良いんですね!?
「ファンクラブ」のように中々反芻しないと味が出てこない、しかし味わえるようになれば神がかっている、
とんでもなく覚悟のこもったものが飛び出てきそうだ。
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<セットリスト>(参考元:ポータルサイト セトリ! http://www.setlist.mx/?p=15866 )
1.OP
2.迷子犬と雨のビート
3.Re:Re
4.アンダースタンド
5.君の街まで
6.夜のコール
7.アフターダーク
8.或る街の群青
9.ブラックアウト
10.真冬のダンス
11.ムスタング
12.ソラニン
13.マーチングバンド
14.惑星
15.融雪
16.藤沢ルーザー
17.リライト
18.ループ&ループ
19.君という花
20.さよならロストジェネレイション
21.海岸通り
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22.踵で愛を打ち鳴らせ
23.転がる岩、君に朝が降る
24.ワールド ワールド ワールド
25.新しい世界
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26.新曲?弾き語り?
27.新世紀のラブソング
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