毒々しいピンチの裏には、青々しいチャンスと諦念
- アーティスト: RADWIMPS
- 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
- 発売日: 2011/03/09
- メディア: CD
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なんだこれは。
毒々しさと青々しさが融合したカオス。混沌だ。
アルバム内の全ての曲の歌詞が重ねられている、CDのジャケットと同様に。
前回の「アルトコロニ−の定理」でそれまでのアルバムで大部分を占めていた「自分と彼女のためのうた」からの脱却が始まったRAD。
良い具合で、2人のための歌と自分の存在を確かめる歌が融合し、アルバムに更なるバラエティーを与えていた衝撃は記憶に新しい。
今作はその傾向がさらに顕著になり、自分の存在だったりを考えさせられる(考えている)曲が多い。コレだけ述べるといわゆるセカイ系なのか?と疑問を持つかもしれないがそんなことはない。
ひたすらに皮肉。ひたすらに青々しい。
その2極化。
いや、青々しい曲でさえ皮肉に塗れることもある。
皮肉は毒々しさを増し、作詞作曲の野田洋次郎の暗い部分を覗き込んだような気分になる。
だが、毒々しいながらも向かおうとする先はある意味の終わりであり、かすかな希望。かすかな青空。
全体としてテンポが速い曲が多いことも今作の大きな特徴か。
ライブチューンとして仕上がったように一見(一聴?)すると思うが、
歌詞を見るとなかなかエグイことを言っていることも。
さらに曲の流れは秀逸。そこまで長くも無いので、一気に聴きたいアルバムだ。
特に1.〜6.あたりまではスゴイ。
初めて聴いたときはそのアクの強さに??となった1.DADAもこのアルバムの中だと、1番でやってくるべき曲だったとはっきりわかる。
4分弱でまとめられた、ロックチューンはバッとはじまりバッと終わる勢いもさることながら、
生きていることを<回り道>とし、人間が矛盾を抱えて"駄々"をこねる存在だとあっけらかんと歌い上げる。なんて赤裸々な、毒を吐き出しているナンバーなんだろう。
結局はこう生きるしかない運命なのか。絶対「絶命」する人間だから。
視聴はコチラから↓
http://www.youtube.com/watch?v=Yy6XeGCNkSM
かと、思えば2.で、凡庸な自分でも何か出来るかなと模索し、
<愛さないで愛でよう 探らないで探そう 語らないで喋ろう 歩まないで歩こう>
という能動的な答えにたどり着く。
爽やかな曲調も救いの目を表現しているように感じる。
NHKサッカーの主題歌でもある、3.君と羊と青はタイトルどおり「群青」をメインテーマとしている。
アルバムでも最速のスピード感溢れる今作は、
<君を見つけ出したときの感情が この五臓六腑を動かしてんだ>
<あの日僕を染め上げた群青が 今もこの皮膚の下を覆ってんだ>
というサビの詞のように、
青い感情、情熱が自分の身体を駆け抜けていく様相を想起させる。
まあ要は、めっちゃ気持ち良い曲。マジオススメです。
視聴はここから↓
http://www.youtube.com/watch?v=K1u_MwT6zV8
最初の疾走3曲から一転し、4.だいだらぼっちは一分以上ギター一本でこなす、スローなナンバー。いわゆる緩急。
一人ぼっちがたくさんいれば、一人ぼっちなんてなんていないじゃんという核心をある意味でついている。
5.もなかなかの「毒」。若干BUMPの「乗車券」とかみたいな曲調のダークさがあるが。
学芸会の世界では自分は「少年D」だけど、自分の世界では自分は主人公なんだという。「少年D」がいなくても世界は始まる。それは、実際の世界と自分の関係と同じ。
ううむ、実にセカイ系。
だが、真の爆弾は先行シングルとしてもリリースされた6.狭心症。
これはヤバイ。楽曲テロに近い。
真実を「抉り」出す歌詞。ひたすらに無骨でリズムを刻み、サビでどす黒さを爆発する楽器たち。
最初は鳥肌が立った。それはあまりにも凄惨なPVを見たからでもあるわけだが。
これは、姿勢として肯定なのか否定なのかという議論を超えた所にある。
聴くために覚悟が必要な曲なのかも知れない。私はそう感じた。聞き流せない。
得体の知れない深い深い井戸の底を覗くようなおどおどろしさ。
ある意味、戦争映画と同じような立ち位置にあるかも。
かなり衝撃的なPVなので、注意
http://www.youtube.com/watch?v=wW4VchHUbws
ほかにも凄まじい曲は勿論ある。
とくにタイトルからしてやばい9.G行為。
突然、エミネムかKREVAがはじまったのか思わせる楽曲。
曲中のギミック・エフェクトも多彩。まるでおもちゃ箱を思いっきりひっくり返したような楽曲だ。歌詞カードもなかなか新鮮なので、是非観てほしい。
13.億万笑者の素晴らしいポジティブさも見逃せない。
絶望や裏切り、寂しさはその逆にあるもののために存在する。その片割れのもとに届くまでセットだということをこの楽曲は述べる。
なにか躓いた人全てに「届け」られるべき曲だ。
自由奔放なRADらしさが前面にあって、しかもメッセージ性も高い。
きっとネガティブな人でも、ポジティブな人でも心に突き刺さるのだろう。
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1. DADA[dadadada Ver.]
2. 透明人間18号
3. 君と羊と青
4. だいだらぼっち
5. 学芸会
6. 狭心症
7. グラウンドゼロ
8. π
9. G行為
10. DUGOUT
11. ものもらい
12. 携帯電話[Cat Ver.]
13. 億万笑者
14. 救世主