TRIAL/the pillows

試練を乗り越える・挑戦する。復活の1枚。

トライアル(DVD付)

トライアル(DVD付)






the pillowsは1989年結成の3人組バンド。
結成20周年を迎えた2009年9月にようやく初の日本武道館公演を行い、大成功を収めた。

特徴は、ミスチルやサザンのような大衆受けするようなサウンド・歌詞でなく、ゴリゴリのオルタナティブな負け犬ロック。


さらに近年は、スティッチのアニメのテーマソングやジャンプアニメ「SKETDANCE」のEDテーマなどもつとめるようになり、コツコツ知名度を伸ばしてきた。

今作がなんと18枚目のアルバム。















震災を経て、このアルバムには大きな変化が発生した。

バンドのフロントマン、山中さわおは自身でソロアルバム2nd「退屈な男」をリリースした。
実際にインタビューで山中さわお自身が語っているが、「震災後、ゆっくりと蝕まれていく感覚が、ある種「退屈」だった」らしい。

アーティスト・一般人の区別なく言えることだが、つまり、心にぼんやりとした影を落とすことになってしまっていた。
その影が、このアルバムには宿っている。例え突進するような勢いのある曲であっても、そこには覚悟のようなものも潜んでいる。

私個人としては、その影こそが今回のアルバムのポイントになったと考えている。
(もちろんすべての曲が震災の影響を直接的に受けているわけではないが、その空気感はヒリヒリと伝わってくる)


















14thアルバム「Wake up! Wake up! Wake up!」から「PIED PIPER」、「OOPARTS」、17thアルバム「HORN AGAIN」と最近のピロウズは、オルタナティブロックの色が非常に濃く、いつも通りのロックな兄貴というイメージはあったが、「MY FOOT」や「Thank you, my twilight」、「Please Mr. Lostman」の持つような個々の曲の強さがなかった。
(アルバム全体としての勢いが強かった)


さらに言えば、昔のピロウズの曲が持っていた悲壮感も薄れていた。ライブにおいてはオルタナアルバムのほうが盛り上がりがあるけれども、ズシーンとくる作品が少なかった印象。

だが、18thアルバムの今作は影を背負ったことで、その悲壮感が出ている。アルバム全体からにじみ出ている。













オススメは、
1,6〜10


もちろん「SKETDANCE」主題歌の3.や12月のシングル5.もクオリティ面では保証されているが、
オススメするのは上記の曲。それだけアルバムオリジナルの曲が充実している。


↓Comic Sonicはコチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=PcwixTwUsmc







1.Revivalでアルバムは力強いスタートを切る。
この曲からすでにこのアルバムが力強いとはっきりわかる。


<この残酷な世界は 誰もが通る道なのかも><僕らは再び新たなスタートをできるのだろうか?>
力強いながらも、どこかドライな印象を持つ1曲目。








6.「ポラリスの輝き 拾わなかった夢現」。スローなこの楽曲は「Thank you, my twilight」を思わせるギターのピコピコ感。
<ペンギンたちに混じって>、<バイソンとすれ違えば>などピロウズ流の動物例えが満載で、古くからのファンも満足できる重厚な曲に仕上がった。


7.「Minority Whisper」は、震災の影響を受けた曲。
ひとつ聴いただけでは、ギターの絡みが面白い。しかし歌詞には、単なるノリのいいロック以外の意味合いがある。

<流行の〜>と何度も歌詞中でリフレインされるが、まさしく「マイノリティ(少数派)」のつぶやきだ。






8.「持ち主のないギター」

7分強という長い曲ながら、聴きどころ十分。
虚しさにあふれた曲ながら、何度も聞きたくなるスルメ曲だ。

この曲は救いなく、<燃え尽きるまでもうすぐなんだろう 流れ星のひとつ それだけさ>と終わる。




だが9.「トライアル」が、8.の「ギター」を救ってくれる。
<最果ての星に紛れた ギターを探しに行く>と始まり、同じ歌詞で終わる。
大切なことなので〜というコピペは有名だが、まさしくこの曲がそれだ。


小気味いいギターイントロに乗せて、流れる歌詞<絶望感の暗闇を 何度も抜け出したはずだ>に思わず心が揺り動かされる。



トライアルの視聴はこちら↓
http://www.youtube.com/watch?v=NoBEcymth8A




10.「Ready Steady Go!」が、明らかにB級感を狙った、ライブで盛り上がれる曲。
なんつっても、歌詞にBUSTERS!って叫ぶ部分があるし。

この曲を、このアルバムを聴き終わったときやっぱりピロウズが「帰ってきた!」と喜び、もう一度再生ボタンを押してしまう。








私の中では、おそらく2006年の「MY FOOT」以来のヒット。

過去を振り返ればもちろん名盤は存在するが、「今」のピロウズが作るのは、この「現実を前に突き進む」素晴らしいアルバムだと思う。






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1. Revival

2. Rescue

3. Comic Sonic

4. Flashback Story

5. エネルギア

6. ポラリスの輝き 拾わなかった夢現

7. Minority Whisper

8. 持ち主のないギター

9. トライアル

10. Ready Steady Go!