PORTAL/Galileo Galilei  (+インストアライブ@渋谷タワレコ(2012/2/5))

新世代、新たなガリレオへの”入口”

PORTAL(初回生産限定盤)(DVD付)

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Galileo Galileiは10代限定の音楽フェス型オーディション、「閃光ライオット」の2008年王者。
今作は彼らの2ndフルアルバム。



彼らは北海道で結成されたバンドで、Vo.Gt.とDr.は兄弟。昨年、12月にキーボードが加入し、5人組になった。
若者らしい、みずみずしいサウンドと真っ直ぐな歌詞を特徴とする。
いや、正確には特徴としていた。

そう、今回のアルバムから大きく彼らは進化した。
以前レビューしたミニアルバムが遥か過去の出来事と思えるほどに。このアルバムこそが新たなガリレオガリレイへの”入り口”。




















進化の兆しはすでに昨年から感じられた。
大ヒットアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」のOPテーマとなったシングル「青い栞」から。

それまでの真っ直ぐ瑞々しいガリレオガリレイではなく、テクニカルで優しさに満ちたサウンド
単純なギターロックではないという予想外の進化によって衝撃を受けたものだ。
(個人的な昨年度の曲ベスト50で、思わず1位にしてしまった程)









さらに昨年の11月のライブでも後述するシングル曲(とそのカップリング曲)を、5人組の編成で見事に再現していた。
青い栞」を年間1位にした私自身も、ライブでロックバンドっぽくアレンジしてしまうんだろうなと思っていたのだが、エレクトロニックなサウンド処理もサンプラー等を使用し再現、いや再現以上のものを魅せてくれた。

「あれ?ガリレオすごい速度で進化してるんじゃないか?」そういう期待が高まった中での2ndアルバム。




















まさにライブで魅せてくれた姿が凝縮されている。
これまでのギターロックの姿はどこへやら。打ち込みとシンセが多用された今作。

今作で彼らが取り入れているジャンルは、エレクトロポップ、チルウェイヴ、シンセポップなどなど・・・
ともかく近年の海外のインディポップを吸収し、自己解釈したような内容になっている。

そういうわけでサウンド面では、邦楽ロックシーンよりも洋楽ロックシーンに近い。ガリレオは新しい立ち位置を自らの手で作り上げた。









サウンド面では洋楽インディーズロックの様々なジャンルに近いものがあるわけだが、歌詞面ではひとつの世界観が形成されている。









どこかはわからないが、欧米の町を想像させる。そしてその街には川が流れていて、やがて海に流れ込んでいる。
川、線路、砂浜… 何度も何度もアルバム内に現れる。

アルバム内の全ての曲が世界観を同じくしているように感じるし、インスト曲もそのための仕掛けになっている。
2曲のインストはともに「swimming」、「Blue River Side Alone」と川をモチーフにしたもので、水の音を取り入れている。
「あの花」でも登場した川のように、町の中にゆっくりと流れている様子がありありと浮かんでくる。







欧米の町を想像させるのに対して、音楽のムードはどこか優しくて牧歌的。つまり北海道の雄大さを想起させる。
ガヤガヤしていた初期に比べると、聴いていて心地が良い。
(個人的には昨年の映画『わたしを離さないで』の町のムードを想起した)

歌詞の内容がリンクしているのも興味深い。ある曲で出てくるモチーフ(くじらの骨など)がほかの曲でも引用されていたりするのでぜひ歌詞にも注目してほしい。


喪失感と喜びと… それはまさに町で生きている人々の息遣いそのものような気がしてならない。













楽曲制作に集中するために地元・北海道で同棲しながら楽曲生活にいそしむ彼らの、楽曲と生活が密接に結び付いたアルバムだといえるだろう。

リラックスしているムードにあふれていて、こちらまでそのムードに浸れる。真摯に音楽に向き合っているムードも伝わってくる快作だ。
ここまでの進化度合いの速さと真摯に音楽に向き合う姿勢から、彼らはまだまだ進化し続けるに違いないと確信できる。
























オススメは、
1,2,8,9,10,11,14









1.「Imaginary Freiends」はいきなりバリバリのエレクトロポップス。もうこの曲でガリレオガリレイが新たなステージに突入したんだとハッとさせられるだろう。

ちなみにコーラスには「さよならポニーテール」のみぃなが参加している。
14.も、みぃながコーラスとして参加している。








アルバム内のオリジナル曲でも最もオススメなのは2.「老人と海」だ。
少年が犬と小さな旅にでる歌詞の内容で、海やクジラの骨など他の曲でもモチーフとなるものがある。

サウンドは、グル―ヴ感にあふれたポップス。キラキラしているけれども夕方の海のような景色が浮かんでくる不思議さも良い。








9.「星を落とす」はバリバリのチルウェイブ。Washed Outチックなんだけどガリレオらしさが付与されている。


8.「明日へ」、11.「青い栞」はすでにシングルでリリースされている曲で、言わずもがな素晴らしい。
すんなりアルバムに入り込んでいる。むしろ「青い栞」がこのアルバムのポータル(入口)のように思える。


あ、そうそう。ガンダムAGEというアニメに、「若々しさ」「優しさ」の特徴があるガリレオを主題歌(「明日へ」)としてぶつけたのは絶対に間違っていると思う。おそらく昨年では唯一、アニメの映像によって楽曲が殺された曲だと思う。

アニメで初めて聴いてなんだこりゃ?と思ったそこのあなた。これは映像なしで聴いてください。
ライブで聴いたときはあまりにもアニメで最初聴いたときとイメージが違い過ぎて驚いた。


青い栞(TV.ver)はコチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=IwuxJhA0lBY











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インストアライブ@渋谷タワレコ(2012/2/5)

セットリスト
1.Kite
2.青い栞
3.星を落とす


タワーレコード地下に、彼らの現在の居住空間兼スタジオの「わんわんスタジオ」が再現されていた。
絨毯や機材は実際に使用しているものだそうだ。

そしてライブが始まったのだが、なんと1曲目のKiteは2人体制。
アルバムでは軽快なギターロックとしての立ち位置があるこの曲をアコースティックギターとキーボード(+鉄琴入りの鍵盤)で演奏。
アルバム曲を大胆に、弾き語りのアコギアレンジしている時点ですでに驚きだ。
テンポがスローになることによりさらに歌詞が染み渡る。音数が少ないだけにごまかしのきかない、澄んだ印象があった。



そして2曲目は有名な「青い栞」…
ってあれ?イントロから声のサンプラーを使用?ドラムレス?でアコギ?
全く別の曲。青い栞を一旦バラバラにして再構築したような曲。もはやリミックス。

3曲目の「星を落とす」もエフェクターをガンガンにかけたギターがないだけに印象がだいぶ違う。







3曲の演奏が終わったのち、トークショーに入った。
事前アンケートの質問やアルバムについての質問が中心。

だがまず今回のインストアライブで用いられた機材紹介。
ランチパッド、鉄琴、ラジカセ…本当に様々なものを楽器として使用する。

ランチパッドはあらかじめ作っておいた音を重ねていくことのできる優れもの。昨年のライブでも使用されていた。
遊び心満載、まさしく新しい音が生まれてくるガリレオによるファクトリーのようだ。









同年代の海外のバンドがどのように音楽を作っているのかを翻訳してまで調べている。
ここから彼らがいかに音楽に前のめりで、進化の速さが頷ける姿勢がひしひしと伝わってくる。



青い栞は原曲の方が好きだが、今回のリミックスには度肝を抜かれた。
遊び心満載のアルバムをさらに遊んでいたのだから。おそらくライブごとに新しいサウンドで何度も楽曲に出会うことが出来るに違いない。メンバー全員が自身専用のシンセを持っていることからも彼らの自由で奔放なスタイルがうかがえる。





ちなみにアルバムタイトルは、ゲームのタイトルがいい感じだったから。だそうです(笑)
まさかゲームのタイトルからきているとは…

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1. Imaginary Freiends

2. 老人と海

3. Kite

4. Swimming

5. さよならフロンティア

6. Freud

7. Good Shoes

8. 明日へ

9. 星を落とす

10. Blue River Side Alone

11. 青い栞

12. スワン

13. 花の狼

14. くじらの骨