2017年映画ベスト10 詳細

2017年のトップ10の詳細です。




10位「メッセージ」

○鬼才、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によるSF映画。正直観るまでは「パッセンジャーズ」や「オブリビオン」ぐらいのものであろうと思っていたが、
インターステラー」などとと同様に新たなSF映画の王道となった。
この時代に新しい王道を観られたことに喜びを覚えるほどだった。

○てっきり予告編からするとスリル感を優先したありがちなSFかと思ったが…
物語が紐解かれたときの爽快感!劇場でハッとさせられてしまった。
「私の負けです・・・」みたいな感情に。




9位「わたしは、ダニエル・ブレイク

○第69回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した本作。
監督は「ジミー、野を駆ける伝説」をもって引退を表明していたが、
現代のイギリスに横たわる問題を描くために復帰をしたケン・ローチ監督。

○イギリスの福祉社会の問題を描く…というと堅苦しく聞こえるかもしれないが、
頑固なお爺さんが、福祉事務所で困っているシングルマザーとその子供と出会う話なので
入口としてはそんなに肩ひじ張らずに観れる。

○ただ単純に「感動作」という括りで覆ってはいけない本作。
主人公のダニエル・ブレイクがシングルマザーに語りかける言葉こそが、我々にとって本当に必要な言葉なのだろう。
今作の結末もある意味、「今の現実」というものをはっきりとあらわしたもの。だからこそ心に残る。


8位「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-

ライトノベル原作、2012年にテレビアニメ化されて以降、大ヒットシリーズとして定着した「ソードーアートオンライン」=SAOが、
ついに劇場版となった。

○まずもって今作がエンタメとして「王道」であることに圧倒された。
当然ある程度SAOワールドの知識が必要だが、
最低限必要なのはTVシリーズ第1期14話までの「アインクラッド編」と呼ばれる、
VR世界に閉じ込められてしまうエピソードまでとなっている。

だがライトから超マニアまで観る、
この種の作品(スターウォーズやマーベル作品含めて)で重要なのは、
どのレイヤーで観ても「物語」として成立するという事。

超絶クオリティの作画、これまでシリーズを観てきたファンや原作ファンを喜ばせる細やかなファンサービス…
そういった部分に言及すると尽きないが、
とにかく序盤の盛り上げ〜緩急をつけて〜クライマックスに持っていくまで
110分間飽きることなくエンタメを"魅せ"つける「王道」がここにはある。


7位「ベイビー・ドライバー


○テンポ早く、ノリノリで痛快な作品をとにかく観たいというのなら、今作においてほかにない。
アドレナリン全快!

○「ショーン・オブ・ザ・デッド」や「ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」の監督エドガー・ライト監督らしい、
ハイテンションムービー。
全てが音楽で構成される映画だけに、ノリノリになることは必至なわけだが、
まさか銃撃シーンまでリズミカルにやるか?と思わず笑ってしまう。
とにかくオープニング、アクセルを入れた瞬間からぶっとばされましょう!



6位「勝手にふるえてろ

○クリスマスイブ、何とか観れる映画は無いかと駆け込んだその先で、
急に今年邦画ナンバーワンが来たのでびっくりした!

綿矢りさ原作の映画。妄想系女子の話という事で、楽しみにはしていたのだが「脳内ポイズンベリー」的なあれかなと高をくくり、あまり期待せずに行ったのだがいい意味での裏切りとなった。

松岡茉優が完璧すぎる。まさにワンマンショーに近いくらい圧倒的。

○原作は読まずに行ったことも功を奏し、演出の以降のさせ方が鳥肌モノだった。
そろそろ食傷ぎみかなーということでスイッチするあたりが最高で、一切テンションが途切れることなく楽しめる、痛快な作品となった。






5位「Fate/stay night [Heaven's Feel]」第1章


○PCゲームで2004年に発売された「Fate/stay night」。
これまで何度か映像化されてきたが、今回映像化された[Heaven's Feel]は2014年に発表、
遂に3年の時を経て公開された。
※最後の映像化という事である程度はしょられて作られているのだが、
そこは「Fate/stay night[Unlimited Blade Works]」における第0話、第1話だけ観ておけば問題ない。

○今作における最大の特徴は「映像の緻密さ」。
キャラクターがまるで実写の演技をしているかののような演出…足元に雪を踏みしめたような跡がある、
各シーン位おける色彩演出など、何度見ても発見が尽きない。

作品全体に漂う静かな緊張感や映像美は、「日本映画」のもつ空気感に近い。
そこに差し込まれる戦闘シーンのエッセンスが加わることでメリハリがきく。

○Aimerによる主題歌「花の唄」の余韻が残る中、
恐ろしいクオリティに何かを吸い取られたような気分になるだろう。





4位「ブレードランナー 2049


○1982年公開のSF映画の金字塔、「ブレードランナー」。
ディストピアな未来都市のモデルケースとしてあまりにも偉大な先例となってしまった本作の続編が作られると聞き、
正直不安しかなかった。
「インディジョーンズ」や「エイリアン」などがっかりさせられた往年の名作シリーズがあったからだ。
だが、そんな心配は杞憂に終わった。

○10位に入れた「メッセージ」の監督、
ドゥニ・ヴィルヌ―ヴは相当プレッシャーのかかるものだったろうに、
見事にブレードランナーの続編をみせてくれた。
(2015年の「スターウォーズ フォースの覚醒」の時もそうだったが、
伝説的SFの続編を作るなんて想像するだけで悪夢的!?)

情報量に対していささか尺が長すぎる(163分)きらいはあるが、
たっぷりじっくりとこの作品世界観を見せつけてくれる。

○個人的に特にはまったのはこの作品の終盤において明かされる事実とそのシーンでのセリフだ。
ネタバレになるため言う事は出来ないが、まさにドンピシャで心に突きささった。

このあとのスターウォーズでも触れるが、
今2017年に上映される作品として落とし込むうえでその事実こそが最も重要なのではないかと感じる。

○そして、この作品が特徴的なのは
他の続編モノと違ってベクトルが常に「ブレードランナー」に向いている点だ。
常に「ブレードランナー」から参照される作品であり、今作を見ると「ブレードランナー」に戻りたくなる。
次の作品に繋がるというよりも、「ブレードランナー」の文脈をきちんと完結させた完結編とでも言うべきだろうか。










3位「STARWARS EPISODE8 最後のジェダイ


○この作品をこんな上位にすることに「なんで?」と思う人も少なくないだろう。
個人的にはこの作品に5つ星評価とすると、☆0をつける人も☆5を付ける人も理解できてしまう。
前者は減点方式、もしくは今回のディズニー化にどうしても我慢ならない場合、
後者は加点方式だった場合だろう。

○「フォースの覚醒」時もそうだったが12月14日18:30に観た1回目では、正直脳内で処理をしきれなかった。
2回目でようやく本作の骨組みに触れることが出来、細部を観ることが出来た。

○惑星クライトの舞台設定としての面白さは秀逸。惑星におけるそれぞれのシーンを最大限に引き立ててくれる。
3回目でもまだ発見があるのだから相変わらず楽しくて仕方がない。
「SAO」でも触れたファンサービスの精神は息づいている。

まあ、いろいろ突っ込みどころはあるが…
MX4Dで観てしまうとエンタメとしてただただ楽しめる。

○今作で非難もされているが、
個人的に評価したいのは、ローグワンの時と同様に物語における「匿名性」をより強くしたことだ。

今の時代のストーリーとして落とし込んだときに最も大事な部分であり、
「フォースの覚醒」からスターウォーズユニバースに加わった子供・若者たちが
"自分事"ととして捉えられる上での最適解ではなかっただろうか。

「アナ雪」「ズートピア」「モアナ」の一連の流れにおける女性の強さ・社会進出の反映という面からみても
ディズニーのマーケティング的やり口が今回のスターウォーズはより濃く反映されたのだろう。

だがある種閉じた過去の6部作から今後ユニバースを拡げていく行く為には、
ここからが新たなスタートラインとなる。
(エピソード7が相当気を使ったものだとすると)

今作の評価はきっと、次のエピソード9で大きく変わる。また2年間、結論を待たされることになりますね。


2位「LOGAN/ローガン」


X-MENシリーズの大人気キャラ、ウルヴァリン
ヒュージャックマンによる、ラストウルヴァリン
全ての思い出がよみがえり、17年間の重みが詰まったラストには、男泣きせずにはいられない。

初日にVIPシート的なひろめのシートで観たんですが、隣の席のサラリーマンもエグい泣き方をしてました。
「ああ、この人も17年が甦っているんだろうなあ…」と感慨にふけったり。

○今作の最大の特徴は、
これまでのアメコミ作品における、前作&続編ありきの作品ではなく、明確に一本として完結させる物語であるという事。
アメコミ映画にありがちな派手な要素を削ぎ落とし、必要最小限で描く美学。

そして、今回はローガン(ウルヴァリン)と謎の少女ローラの物語。
まるでクリント・イーストウッドが描くようなヒリヒリとした世界観、西部劇をも彷彿とさせる。
バイオレンス表現もこれまでの作品とは一線を画す。

とにかく!ローガンのくたびれ加減が良い。もう「ヒーロー」ではない。
それでも闘い続ける姿の男らしさといったら…

今後マーベル、DC映画といったアメコミ映画はどんどん増えていくでしょうが、
この作品は唯一性をもって残り、より価値を高めていくことでしょう。










1位「ラ・ラ・ランド


○というわけで1位はアカデミーを取り損ねた、「ラ・ラ・ランド」です。
とにかく最初から最後まで作品として途切れることなく最&高なミュージカル映画
観終わった日からサントラが止まらなくなることうけあい。
ミュージカル演出がそこまで過剰でないので見やすいのでは?

監督は「セッション」(原題:whiplash)のデミアン・チャゼル。
連続でこんな恐ろしいクオリティのものを作ってくるとか化け物かと。


○最初のロスのハイウェイシーンからもうこれはとんでもないものが始まってしまったと虜だ。
そしてラストに待ち受ける、まるでスターウォーズのエンドクレジットのような作品を総括する音楽。
いやいや待ってくれこんなものお最後に隠し持っていたのかと。
個人的にはストーリーの落としどころがツボ過ぎる。

ブレードランナー2049」でもそうなんだけど、
ライアンゴズリングが背負う悲哀感ってしっくりくるんですよ…


来年は、「インフィニティウォー」が待ち受ける、マーベルイヤー!
25年以上好きな人間としては、あのスケール感がいよいよスクリーン位出てくると思うと楽しみです。