2019年のトップ10の詳細です。
10位「ガリーボーイ」
〇インドのラッパーの実話をベースとしたインド映画。
インドのよくあるミュージカル…ボリウッド映画ではなく、
インドの貧困問題をベースとした成り上がり物語とラップバトルの掛け算が
組み合わさって150分の直尺もダレることなく多種多様な展開で楽しめる。
〇ところどころにある対立構造、
女性同士の戦い、貧困との戦い、そしてラップバトル。
心情が集約され爆発する、ラップパートがとにかくアツい。
ド王道、最高。
9位「グリーンブック」
〇アカデミー賞作品賞受賞作。
黒人嫌いの白人が、黒人アーティストの運転手として旅していく中で、
絆を深めていく物語。シンプルなストーリーだからこそ、ストレートに感動できる。
「最強のふたり」にも通ずる。
8位 劇場版 「Fate/stay night [Heaven's Feel] II. lost butterfly
〇「Fate/stya night [Heaven's Feel」3部作の第2章。
凄絶なる第1章を経て、さらに凄絶な第2章が待っていた。
怒涛の展開と前作を超える感情の振れ幅。
主題歌「I beg you」の呪われそうなほどの圧もまた素敵。
7位「さらば愛しきアウトロー」
〇ロバート・レッドフォード 俳優引退作。
軽妙な語り口でテンポよく、すっきりと観れる作品。
今年も「運び屋」「ラスト・ムービースター」など人生の黄昏時にフォーカスをあてる作品は多数あったが個人的には今作が一番。
こういう余裕のある大人でありたい、というのが一番大きいのだろうか。
6位「存在のない子供たち」
〇純粋なエンタメ系の映画を抜くと実質的には2019年の2位にあたる今作。
女性監督ナディーン・ラバキーによるレバノン映画。アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。
実際にスラム街に住んでいる少年が、自分の名前の役名で近しい立ち位置を演じるという限りなくドキュメンタリーに近い作品。
〇「万引き家族」以上に、鈍器でガツンと殴られるような衝撃。
否応なく社会のシステムに飲み込まれていく子供たちが、克明に描かれる。
目を背けてはいけない物語。
5位「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
〇タランティーノ監督による「イングロリアス・バスターズ」「ジャンゴ 繋がれざるもの」に続く、クソッたれな史実を映画というフィクションでぶっ飛ばすシリーズ。
アニメという媒体なら成立しやすいことではあるが、
実写でかつ限りなくリアルな物語として成立させてしまうのが凄いところ。
個人的には、何の事件をもとにしているかはあまり調べずに行く方が作品として面白く観れる気もする。(実際自分もなるべく入れないようにしたので)
〇タランティーノらしい軽妙なリズムが、ハリウッドを舞台とした本作にはとてもハマりやすい。個人的には「ジャンゴ」よりも軽い口当たりで観ることが出来た。
〇あとはディカプリオとブラピのバディが最&高。
ディカプリオ演じるリック・ダルトンの演技に対する葛藤は目が離せないし、
ブラピ演じるスタントマンのクリスが頼れるったらありゃしない。
4位「STARWARS EPISODE9 スカイウォーカーの夜明け」
〇「映画作品」と単純に考える正直トップ10に入るかも怪しいが、
感情を刺激する「エモい」シーンをダイジェストのごとく次々と放り込み、
ラストシーンまで引っ張っていくところに負けてこの位置に。
サッカーボールで良い感じにキックオフしたのに、
「8」ではいつのまにかラグビーボールになってて、
それはそれで良いからそのままラグビーでプレイするかと思いきや、
やっぱりサッカーフィールドに戻って最後はそのボールを力づくで整形し直してゴールへと捻じ込んだ感じ。
〇同じ一区切りの作品としても、なんだか「アベンジャーズ/エンドゲーム」と対局にあるような感じ。
〇やっぱりジョンウィリアムズの音楽で、ある程度は何とかなってしまう。
〇ただしラストシーンは、「そういうことだったのか!」と震えた。ネタバレなしで観ないといけない作品。
3位「スパイダーマン:スパイダー・バース」
〇「スターウォーズ」と「アベンジャーズ」が集大成で一つの時代の終わりを
みせた映画なら、こちらは新しい時代の始まりを告げる映画。
〇ピクサーではないCG映画の映像表現、それがまだまだ幾らでも可能性があることを明示してくれた映画。正直、観たときの衝撃は「マジで悔しい」に尽きる。
キャラクターごとに異なる映像表現、影、音楽、SEの付け方、どれを取っても何度見ても楽しみがいのある作品。
「スパイダーバース」という、異なる世界線から集まるスパイダーマンたちの特徴を生かす映像表現としてここまでのものを出されるとは正直思わなかった。
〇楽曲もおすすめ。
2位「ジョーカー」
〇ヒース・レジャーが「ダークナイト」で演じた圧倒的な"ジョーカー像"。
その高い高いハードルがある中でジョーカー単独を扱う映画をやる事ははっきり言って無謀だと思っていた。しかし、今作は時代に即したアプローチ…"ジョーカーに共感をさせる"ということで、"ジョーカー"をアップデートすることに成功した。
(「時代に即している物語」が"語られている"こと自体がこの作品をさらに面白くしている要素であるが)
〇語れる悪が「ジョーカー」である、ということを改めて実感させられた快作。
超常的な能力が無い悪役にも関わらず、1940年の登場以来魅力は継承され、アップデートされ続けている。
今回ジョーカーにハマった人向けにはPS4で発売されているゲーム、「アーカム」シリーズも非常におすすめ。
1位「アベンジャーズ/エンドゲーム」
〇2008年公開の「アイアンマン」から続く、マーベルコミックスの映画時空。
「マーベル・シネマティック・ユニバース」その22作目にして一区切りとなる作品。
(実際にはこの作品の後に公開した「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」が区切りではあるが)
2010年代を代表するシリーズといって間違いなく、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「ブラックパンサー」「キャプテンマーベル」といったシリーズに属する作品は、これまでの映画とは違う試みへと踏み込み、成功をおさめてきた。
〇本作は、昨年公開の「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」ともともとは、パート1・2という前後編の関係で構成されていた。そのため、完全に地続きの関係にある作品であるため、1本での評価はかなり難しい。
今作は、前作を観て「これをどうやって落とすのか」という予測をはねのけ、これまで22作で積み上げてきたもの全てが生かされる展開。正直180分という長尺が全く気にならない。各キャラクターが各作品で積み上げたものがかくもきちんと落としどころが用意されているとは…
私自身もオールナイト上映に行くようになったのは、ここ数年ではあるが、
正直「スターウォーズ エピソード7」の劇場の熱狂ぶりよりもとてつもないエネルギーが劇場に渦巻き、ひとつの”いきもの”になっていた。
予想だにしたい展開には劇場が息をのみ、
笑いどころには笑い、終盤には拍手喝采、エンドロールはすべてに拍手。
人生の月日と映画が熟成させてきた時間を重ね合わせるように、観客が一体化する。
いまの時代のエンタメの到達点。
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