2016年映画ベスト10 詳細

改めてみるとベスト10のうち8本が下半期なんですね…


10位「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー


○昨年のエピソード7同様、正直期待していない所が大きかった今作。だが、蓋を開けてみればエピソード4の意味をより完璧にさせる外伝となった。言及は避けるが後半の怒涛の展開は必見。

○ただ1点、個人的には序盤のシークエンスが少し冗長になってしまっていた感じ。もうひと展開あるともっと上お評価にしたかもしれない。
帝国の強さ・恐ろしさみたいなものを象徴するデス・スターをきちんと見せつける感じは観ていて鳥肌モノ。

○K-2SOな!



9位「レヴェナント:蘇えりし者


○祝レオ様悲願のアカデミー主演男優賞受賞作品は、凄絶。とにかく最初から最後まで全てが凄絶。ストーリー、演出、カメラワーク、演技、それらが一体となって襲いかかってくるかのよう。こんなものみせられたらディカプリオ!!!!トム・ハーディ!!!!ってならざるを得ない。ガチンコで凍死しかけながら川に入ったレオ様の気迫ですよ。

○静けさと緊張感が全編に張りつめており、2時間半気が抜けない。自然光もをふんだんに利用した撮影方法も自然の厳しさや太陽光のぬくもりなどさんざまなものを感じさせる。

○マンガ「ゴールデンカムイ」が好きな人にはぜひ観て欲しい。あの作品を実写化するならこのくらいのクオリティじゃないと、というくらいハマっている作品。




8位「湯を沸かすほどの熱い愛」


○「紙の月」でも好演を披露した宮沢りえだが個人的にはもうこっちが代表作!でいいのではないかと思うほど、素晴らしく熱い演技だった。

○突然のガン宣告で余命わずかとなった母親、という設定からして(今年の秋はガン設定の映画が多かった)泣きに行かせる気まんまんのストーリーかと思いきやそうでもない。だが、観ていくうちに自然と涙があふれてきてしまう、そんな作品となっている。
けっこう意表を突かれる展開もあり、微妙な違和感もそこで納得させられてしまった。

○観終わった後ひたすらに「切ない」「悲しい」ではなくて、「スッキリした」とさせてくれるのもこの映画を上位に挙げた理由。一癖も二癖も違ったファミリー映画です。




7位「シン・ゴジラ

○今年のサプライズの一つと言っても過言ではないでしょう。そもそもあんまり怪獣映画とかを高く評価しない人間なので、この順位にいることがサプライズ。
庵野総監督の映画、というかほぼエヴァ要素です。色んな人に観てもらって感想聞きたい映画で、賛否は果てしなく別れていくであろう作品。個人的には正に「現実」(ニッポン)対「虚構」(ゴジラ)というキャッチがバシッと決まっててアリ。

○超情報過多、という映画だけに何回見ても新しい気分で楽しめます。震災後の日本というものが如実に表れた映画で、プロレス的なゴジラ映画でなく、災害としての、「神」災としてのゴジラはなるほどなぁ…という感じです。

○ちなみに2回目は満を持して4DXで観た。中盤揺れが静かになるところはあるものの、やはり4DXと相性がいい。2回目の方が余計な情報を敢えてスルーするということができるので非常に観やすかった。




6位「シング・ストリート 未来へのうた」


○結果的にヒューマン系作品の年間王者はこの作品となった。8年代のアイルランドのダブリンを舞台とした、「けいおん」的な青春映画。とにかく痛快・爽快な青春ムービーに仕上がっており、全編隙がない。

○80年代の名曲たちもあるので、その時代の音楽好きにもオススメだし知らなくても新たに名曲たちと出会えるという意味でオススメです。バンド作ろうぜ!みたいな若さのエネルギーが眩しい。

○「はじまりのうた」監督のジョン・カーニー作品らしく、音楽シーンにもかなりのこだわり・クオリティがある。ちなみにサントラも秀逸なのでぜひ。





5位「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

アベンジャーズの映画シリーズ(マーベルシネマティックユニバース)の1画を成す、キャプテンアメリカ
個人的には邦訳された20巻近くあるシリーズをすべて購入しているだけにとにかくハードルを上げまくっていた、キャプテンアメリカの3作目、シビルウォー
実質的には「アベンジャーズ2.5」とも言うべき内容で期待に沿う出来でした。

○あれだけのキャラ数がいたら普通とっちらかるものですが、様々なシークエンスでそれぞが生かされて全く文句をつけようがない。
ブラックパンサーという、これまでのアベンジャーズのキャラから比べると地味に部類に位置するキャラもそうだが、特に既にアベンジャーズの作品群が存在している中にスパイダーマンという異物をどうやって放りこむのか、というところをいぶかしげに見ていた。



○これまでの高いとは一味違った「戦うことで起きる代償」というテーマと、ヒーロー大集結!なダイナミズムを巧みに組み合わせた点に感服です。キャップがカッコ良い!

そして2017年は様々な世界を渡り歩けるドクターストレンジ、地球のスパイダーマン、宇宙のガーディアンズオブギャラクシー、神の世界のソーといった映画が公開されていくので、アベンジャーズ3への布石がそれぞれの舞台で描かれていくでしょう。




4位「君の名は。


○もう説明のいらない、2016年最大の話題作。
RADWIMPSのアルバムレビューでも書いたが、とにかく「前々前世」の登場によりあがりまくっていたのでまさかの初日21:30の回で観るほどの気合の入れよう、かつハードルのあげようだったが観終わった後、溜息が出るほど「やられた!」と思った。(TOP10はすべてそういう映画ですが)

新海誠監督については、前の長編「星を追う子ども」がどこかで観たようなジブリ感、しかし消化不良でしんどかった。そのため心配していたが、ある意味本人の得意な、リアルな描写というジャンルにSF要素を落とし込んでいい具合になっていた。

○ファミリーへ向けた細田守への対立軸として今回の新海誠はあったような気がする。実際それが当たって、二子玉川のレイトショーで満員という状況を引き起こしてるんだろうし。もはや社会現象となったので「どこに向けた」という次元は超越してますが…



○監督得意の背景描写は相変わらずスゴすぎて鳥肌が立つレベル。RADWIMPSの曲がブリッジになり、短編(テーマ性)が連なってひとつの作品になっていた。また言の葉の庭も観たくなったなぁ。

RADWIMPSの楽曲陣といったらもう!みたいな感じ。というかある意味各楽曲のPVのようにみえるほどのフィット。RADが苦手だとがっつり使われてるんできついかもしれないが…サントラも素晴らしい(今年はいいサントラが多すぎる)











3位「この世界の片隅に


こうの史代による日本の漫画作品で、広島の呉を舞台とし戦争を題材としたアニメ映画。そもそも個人的にはのんが主演をつとめることの話題性先行で観に行ったのだが、いい意味で裏切られた。

○この戦争映画は「火垂るの墓」のようなテイストではなく”戦争というもの”を伝えることに成功している。全編にわたり、ほのぼのとしたテイストなのだが要所要所で締めが入り、他の戦争映画にはないこのアニメ映画にしかできないニュアンスに仕上がる。だからこそ口コミで拡がり続ける爆発力をみせたのだろう。

ある意味「湯を沸かすほどの熱い愛」と近い、良い裏切られ方ー鑑賞後感だった。


コトリンゴによるサントラ・楽曲も作品世界にぴったりマッチ。さっきから同じようなことばかり書いてますが、事実そうなんだからしょうがない。ちなみにのん(能年玲奈)は全く違和感がない。そんなことを主眼として観に行こうとして自分がまるで愚か者のように感じてしまった。









2位「ズートピア


○ディズニーによる、3Dアニメーション映画。完成度の高さに震えた。これはあかんでしょう。なんてバランス感覚なんや…
中高生の頃は、ディズニーなんて子供向けなんや!みたいなひねくれ方をしていましたが、大人になってみるとそのマーケティング力と脚本力と…すべての総合力の高さに嫉妬みたいなものを感じます。

正直今年のランキングは、期せずしてディズニーVSジャパニメーションという構図になってましたね。

○ジュディのキャラクター性は「アナと雪の女王」に引き続き、女性へのマーケティングをしっかりとした完璧なもの。それにニックとの関係性が加わればまあそれはドンピシャでしょう。
あとはそれぞれの動物的特徴を落とし込みつつ、期待通りだったり裏切ったりと塩梅を加えていくあたりが最高。それぞれのキャラの挙動をみているだけで飽きることは無い。

○さまざまな動物が入り乱れるズートピアは、人種のモザイク、アメリカそのもののだ。アーティストが政治的な発言をするあたりも、いかにもアメリカらしいなあと。

○最後に、最近のディズニーの中でもギャグセンスが秀逸で死ぬほど笑った。









1位「聲の形


○というわけで1位は同名漫画を、「けいおん」「たまこラブストーリー」の山田監督・京都アニメーションがアニメ化した「聲の形」です。原作ファンからは賛否両論あるけれども個人的には一つの映画作品としてがっちりハマりました。
※ちなみに原作は途中まででとめてます

○最初のシーンから最後のシーンまで殆ど泣きそうな状態で観ていました。

今作の良いところは、登場人物がそれぞれエゴイスティック/自分勝手な部分を持っていること。それが観ている側にもブーメランのように帰ってきて、他人のふりみて何とやらという状態になる。だからこそそれぞれのキャラに共感できる。主要キャラに聖人君主のようなキャラがいないこと、それぞれのキャラの人間らしさがこの作品の最も大切な部分だ。

特にラストは、この作品(映画版)のテーマをはっと思い知らされる。


○耳の聞こえない西宮硝子役を演じた早見沙織は、正直2016年アニメでアカデミー的な賞を考えると圧倒的に主演女優賞だと思われる。凄絶な演技。





○過去の監督作品でもみられた山田監督の音楽趣向は今作でも健在で、オープニング部分の導入など相変わらず痺れる使い方をしてくれる。

たまこラブストーリー」でも思ったことだが、すごく日本映画らしいフィルムのつくりかた・雰囲気づくりをしていて、日本のアニメにしかできない、ということを強く感じさせてくれる。


○今作もagraphやLAMAとしても活動する、牛尾憲輔によるサントラが秀逸な作品。「ピンポン」のアニメでもサントラを手掛けた同氏による、電子的かつ温かみのある音楽世界観が拡がる。クリアーなサウンドにある滲みが、癖になる。