Family Record/People In The Box

そこに拡がるのは、「予測の外」の世界

Family Record

Family Record



People In The Boxは3人組ロックバンド。
今作が2ndアルバム。




彼らの特徴は、予測できない変則的なリズム・音楽性。
そしてボーカルの透明度の高い声と、メタファーにまみれてみえる歌詞世界。


これらの要素が相まって繰り出されるのは、中毒的サウンドだ。
一度ハマると単純な曲構成がひどくつまらないモノだと思ってしまう危険性すらも孕む。
それほどまでに特殊な音楽。




だが、特殊だからといってマニアックに偏るのではなく、
かならずポップさも内包しているところがポイントだ。

だからこそ多くの人に支持される存在となる。
<特殊>と<ポップ>という両極の要素を、いとも簡単にミックスさせるその実力が彼らの素晴らしいところ。ともすれば矛盾を抱えてしまう。




















今作は、前述の特徴を最大限に発揮した作品に仕上がった。
変則のオンパレード。





タイトル「Family Record」が示すとおり、曲中には「パパ」「ママ」「家」などのワードが含まれる。だが、単純な「記録」だとは到底思えない。

さらに曲名。それぞれが地名となっており、世界中を旅しているかのような様相になっている。そこから単純に考えれば「旅の記録」。だが何かおかしい。

聴いているうちに底知れぬ恐ろしさを覚えることから、何かとんでもない「仕掛け」があるように思えてならない。
(ネットでは中絶説や家族の誰かが死亡している説など)

といった感じで
解釈をしようと思ったが、何回聴いても正直なところ難しすぎます。
ていうか無理です(笑)。

















歌詞世界は、常に現実感と空想性に支配されている。
「妙な」現実感といったところが適当だろうか。



その「妙な」歌詞には力がある。


歌詞を意識して聴けば、その歌詞に対してとめどなく疑問や考察が巡る。

だが、彼らの恐ろしさを感じたのはあまり意識しないで聴いていたときにもスッと頭に歌詞が入ってきたときだった。


スッと入るということが意味するのは、本能がリアルさとポップさを感じ取ったということだろう。
音楽の根源的部分として、意識させずにスッと入ることが、素晴らしい音楽であることの証明だと思う。そうすると、とんでもない"恐ろしい"傑作に仕上がったのではないか。



















オススメ曲は、
2,3,5,6,9,12




2,3,6,12は
Peopleらしい曲。

ベースの力強さ、独特のドラムのリズム、アルペジオのように細くも太くもなるギター。

ふわふわとした入りであっても、サビではきっちりしめる。

魅力たっぷりの曲たちだろう。







だが、
鳥肌が立つほどやばいのは5.旧市街。

6分の長い曲。




イントロの恐ろしいほどの重々しい怪しさ。
そして始まる歌は語りかけるような口調。



だが、この曲の凄さは二転三転し、テンションが何度も変わる特異性だ。

「ありえない、なんてことはありえない」という誰かさんの言葉象徴しているかのような音楽。
初めて聴いたときは「うぇぇ!?」とびっくりしてしまった。そのぐらいの衝撃。

是非是非
ここから聴いてみて。






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1. 東京

2. アメリ

3. ベルリン

4. レテビーチ

5. 旧市街

6. ストックホルム

7. リマ

8. マルタ

9. 新市街

10. スルツェイ

11. JFK空港

12. どこでもないところ