THE END/毛皮のマリーズ

"喪失"という自らへのアンサー

THE END【初回盤】

THE END【初回盤】






毛皮のマリーズは、男女4人で構成されるバンド。
ボーカルの志磨遼平が中心。



2003年結成され、3枚インディーズでアルバムをリリースした後、2010年メジャーデビュー。どんどん知名度を上げ、今年1月に発表された「ティン・パン・アレイ」はオリコンチャート6位にランクインするほどに。
まさに今最も勢いをもっていたバンドの一つだった。
私からは、ロックンロールリバイバルの旗手のような存在に見えていた。


しかし今年9月、突如として解散を発表し、今作をラストアルバムとするとしたことで我々を驚かせた。


今作は6枚目のアルバム。

ちなみにCMはこちら
http://www.youtube.com/watch?v=MuLhmj6L93k





















彼らの特徴は、
ロックンロールらしいロックンロールと、そのだみ声的な癖になるボーカルだろう。

ロックンロールリバイバルブームの旗手と言うべきにふさわしいその音楽性は、60年代を思わせる。しかしロックは古くはならない。

60年代を思わせるにも関わらず、常に新鮮だ。
彼らだから古くならないのかもしれない。安心と驚きを常にもって音源を聴けるのが毛皮のマリーズだ。



もうひとつのだみ声的ボーカルは、正直最初は慣れなかった。というのも、普段TVなどで流れている音楽があまりにも整然と鳴らされた単純なポップスだからなのだろう。

しかし慣れてくると、なんと癖になることか。ボーカルの揺れ具合が生き生きとしていて音楽が生きているものだと思い出させてくれる。

























CDに入っていた志磨遼平自身のメッセージからこのアルバムをみると、
このアルバムは失う事で、失うことの重みを得た。



それは、ゆらゆら帝国のラストアルバム「空洞です」のあり方にも似ている。「これ以上のモノはつくれない」という結論から、ゆらゆら帝国はその幕を閉じた。
(アルバム内の曲、「空洞です」は間違いなく傑作だと思います)



毛皮のマリーズも同様に、「ティン・パン・アレイ」という光り輝く祝福に満ちた快作を得たからこそ、今作はその対極に位置するものを作らざるを無かった。

そこに志磨遼平の葛藤があったのだろう。


そして対極に位置させるためには、ロンドンで収録しただけでは足りなかったのだろう。
(仮タイトルは、アルバム内にもある曲名「(毛皮のマリーズの)ハロー!ロンドン」だったらしい)
毛皮のマリーズ自体を捨てることで、音に重みを、説得性を持たせねばならなくなったのか。




そしてこのアルバムは名作になった。全ての音にラストという重みが加わる。



























オススメは、
2,4,9,10,11,12






個人的に最もオススメなのは、
2.HEART OF GOLDだ。


まるでアンセムのようなこの曲は、

最初の<夜の窓を叩く雨は 勢いを増すばかり>から

<もう雨は止むだろう そして朝日が昇るさ><旅立ちだ Baby>
<さあ行こう さあ行こう 僕のHEART OF GOLD>
と最後に締めくくられることで、
雨が晴れ、光が差し込む様を見て取ることが出来る。


その壮大さと、闇から光へと移り行く様は聴くものを圧倒する。



HEART OF GOLDはこちらから↓
http://www.youtube.com/watch?v=-fBotly9ZIw












ロンドンのアビィ・ロード・スタジオでレコーディングが行われたという後半の楽曲陣も
素晴らしい。



2分弱ながらもしっかりとバンドサウンドしている9.「となりにいてね」、
ストリングスと静かにアコギ主体で聴かせる10.「ダンデライオン」は聴き応え充分だ。

ピアノから入る11.JUBILEEの切なさといったら…本来はこの曲がアルバムのラストだったのだろう。完全に幕が下ろされるムードに入っている。








そしてロンドンレコーディング後に急遽入れられた12.「ジ・エンド」。
最初はなんだかふざけてんのかなー

と思ったら突如としてハイスピードな、ブルーハーツよろしくなロックに変化。



そして
<これが最後だ><さらば 僕らの美しい日々>
<ジ・エンド>
と志磨遼平自信が叫ぶことによって完結する。

余韻にいつまでも浸っていたくなるようなラストの流れだ。





ーーーーーーーー

1. The End Of The World

2. HEART OF GOLD

3. ラストワルツ

4. 夢のあと

5. 上海姑娘

6. ラプソディ・イン・ザ・ムード

7. The Ballaed Of Saturday Night

8. 毛皮のマリーズのハロー!ロンドン

9. となりにいてね

10. ダンデライオン

11. JUBILEE

12. ジ・エンド