君がまたブラウスのボタンを留めるまで/BIGMAMA

喪失も幸福もこの12片の中に

君がまたブラウスのボタンを留めるまで

君がまたブラウスのボタンを留めるまで



BIGMAMAは、5人組のロックバンド。通常のバンド編成にヴァイオリンを加えた編成になっている。

今回が5枚目のアルバム。私自身が彼らを知ったのは2009年のシングル「ダイヤモンドリング」だった。
私の中での彼らのイメージは、文系な歌詞と、ヴァイオリンをアクセントとしてサウンドを流麗にしていたイメージだ。

それゆえにサウンドが予想できてしまうのではと、フルアルバムで聴くことから私を遠ざけていた感もある。
だがそれが大きく間違っていたことを、このアルバムは証明した。














そう、これは早くも今年を代表する1枚となるかもしれない可能性に満ちたアルバム。





「君がまたブラウスのボタンを留めるまで」は、とてつもなくカラフルなアルバムだ。

明るい曲が揃っているという意味でカラフルなのではなく、明るい曲も暗い曲もどちらも揃っている点においてカラフル。
まさしく人間の人生そのもの。続いてく日常の中で、喪失も幸福もすべてをひっくるめてのアルバムだ。

喪失と幸福を、12片の歌に盛り込まれる。そしてそれぞれの欠片が混然一体となっている。
しかもそれぞれがそれぞれで大きな輝きを放っている。

















とても赤裸々な心情表現が、歌詞として、サウンドとして、”音楽”として昇華された作品。

単純にヴァイオリンが音としてあるから、ドラマチックになったのだと単純な論理ではなく、
心情が昇華されたからこそ心に突き刺さるような作品となったのだろう。その純粋なまでの心情に惹かれる。


悲壮感にあふれていても疾走感がある曲、皮肉じみたこと綺麗な曲で歌い上げたりと天邪鬼な様相も垣間見える。
それもまた人間味が溢れている。

フロントマンの金井政人は、このアルバムの先行シングルから自身のことを歌にするようになったらしく、
だからこそ人間味がよりあふれているのかもしれない。さらけ出した解放感に似たものもある。




















オススメは、

2,4,5,7,10,11,12














このアルバムはどの曲をとってもシングル曲のクオリティで最高なのだが、
まず入り口として聴いてもらいたいのは昨年シングルとしてリリースされた2曲。









2.「#DIV/0!」、11.「秘密」だ。

ひとつの物語として構成されている2.は、宝を見つけた9人の人間が疑心暗鬼となり自らの欲のために殺しあっていく曲。
とにかく詞が秀逸で、<人はどうして分け合うことに怯え 挙句の果て 奪ってしまうの>というサビの部分は悲痛な問いかけとなって私たちに迫ってくる。

突き抜けていくスピード感と、残り人数がカウントダウンされていくスリリングさ、そして最後の盛り上がりは必聴モノだ。











11.「秘密」も疾走感にあふれた曲だが、2.とは違ってサウンドにはサスペンスさよりもロマンチックさが光る。

2人だけの秘密を共有した”君”がいなくなった切なさがサウンドと歌詞にのせて届けられ、こちらまで胸を締め付けられるかのようだ。




2曲とも切なさや悲しみを内包していながらも、どちらも違う色を帯びている。
面白いのは、この2つの曲でヴァイオリンが違った楽器のように聞こえてくること。

前者では、物語を盛り上げる映画のBGMのような。そして悲痛な叫びのような。
後者では、切ない感情を表すように。

アルバムの中でヴァイオリンがどういうサウンドに聞こえるかを比較するのも面白い楽しみ方かもしれない。



↓#DIV/0!はコチラから↓
http://www.youtube.com/watch?v=oVx6Zoc-14w


秘密はコチラ!↓
http://www.youtube.com/watch?v=aMQ8Sy_994Y



















アルバムタイトルにもなっている、4.「until the blouse is buttoned up」も名作。

ブラウスのボタンを留めて去ろうとしている最愛の”君”へ送る歌。
アコギやヴァイオリンなどの絡み方が見事で、美しい歌。

去ろうとするまでは自分の気持ちを精一杯歌にして届けようという意志が爽やかに聴こえてくる。



until the blouse is buttoned upはコチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=fzls3TQyZD0





その他、5.のオーケストラチックな荘厳なロック(V系っぽい?)や
7.でサンキューはファッキューと皮肉ってしまうセンス(ゆったりな始まりから激しくテンポアップするのも面白い)、
悲観性たっぷりの10.などなど聴きどころは尽きない。















どこを切り取っても素晴らしいポップス。彼らの名前を初めて聞く人や今まで名前しか知らなかった人にもお勧めできる1枚だ。

また聴かなきゃ”いけない”アーティストが増えたってことですね…






ーーーーーーーー

1. beautiful lie, beautiful smile

2. #DIV/0!

3. 最後の一口

4. until the blouse is buttoned up

5. 荒狂曲"シンセカイ" 〜orchestra編〜

6. Zoo at 2 a.m.

7. "Thank You" is "Fxxk You"

8. アリギリス

9. I'm Standing on the Scaffold

10. 週末思想

11. 秘密

12. 母に贈る歌