ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜

1960年代前半、アメリカ南部の町ジャクソン。

大学を卒業して実家に戻ったスキーター(エマ・ストーン)は、周りの同級生が結婚していく中作家の夢を叶えようと、新聞社に就職する。スキーターは家事のコラムを執筆するために友人のメイド、エイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)の力を借りる。
やがて取材を続けるうちにスキーターは、南部の白人主義社会に疑問を抱いていく…


観賞日
2012年4月30日



【87点】











痛快な物語。それに尽きる。
人種差別という重いテーマを扱いながらもこの映画には陰鬱な雰囲気はあまり見られない。
もちろん真剣な箇所も多いが、このイメージはそういった暗い部分を吹き飛ばすかのような痛快さこそが本懐。












特筆すべきは、150分もの長さながら一切それを感じさせないテンポの良さ。

このテンポの良さは、前述した痛快さと密接に関係している。
ひたすらに差別を描き、物語が進んでいくとなると、
よっぽど巧みな心情表現がなされない限りきっと観客は長さを感じてしまうだろう。

だが今作はコメディータッチという「緩急」が加わることで、テンポがよくなる。
差別の表現によりどよんとしてしまう空気にスッと差し込まれる。

この映画がここまで高く評価されている理由はここにある。
もちろん私もその点に深く心を動かされた一人だ。












物語の目線が、ひとつではないことも今作を面白くする要素の一つ。

息子を失い、気力が低いメイドのエイビリーン、メイドの扱いに疑問を抱き、働く白人女性スキーター、
そしてエイビリーンの親友で料理上手のミニーの3つの目線が今作にはある。

前者の黒人と白人の2人は、現状を2つの視点から見るという意味でバランスが取れている。
ここにスパイスとして加わってくるのがミニーの視点だ。

ミニーはなんだか親分肌のような豪快さを持つ性格。
粗暴な言葉づかいではあるが、同時に頼れる存在でもある。


このミニーはオクタヴィア・スペンサーが演じたのだが、強烈な演技でアカデミー主演女優賞を受賞している。
メイドの枠を超えた、とんでもないキャラクターのメイドとして存在するミニーは、まさしく今作の中心にあったといえるだろう。








男性が作り上げてきた法律によって、
白人女性たちはそれを当たり前として呑み、法律なんだからとその違和感を気にも留めようとしない。
そういった構図も垣間見えた。

ひたすらに差別をより進行しようとする女性ヒリーも、妻として、婦人会のリーダーとしてのメンツを保とうとして盲目的になる。

この映画の中では、もちろん彼女をただただ憎むべきアイコンとしてみることも可能だが、
古い南部の州で、ただただ家庭に入ることが正義とされてしまってきた古い体制の犠牲者ともみれる。

(実際、対比としてかどうかはわからないがニューヨークの編集長の女性はバリバリ働いていそうな様子を醸し出していた)





加えて、エンドロールの主題歌も前に進んでいく力強さを持った素晴らしい歌で、
後の予定のためにすぐさま出ようとした私の足を止めたことも付け加えておきたい。