plenty/plenty

”蒼さ”が辿り着いた場所

plenty

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plentyは3人組のバンドだった。しかし2011年7月にドラムスが脱退。
現在は2人組でサポートメンバーを迎えて活動している。


ちなみに前回のレビューはこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/chairmanzx/20100913/1284394679





















plentyは2011年、トリプルAサイドシングルを2枚リリース、
さらにSound Film Trackという新しい表現形態でSound Film Track「あいという」リリースした。

後者のシングルは、映像と楽曲をセットで考えるという新たな手法で、さらにバンドの芸術性を高めた。






今作は彼らの1stフルアルバム。
そしてアルバム名にはバンド名を与えている。
ここからもこのアルバムに対する気合・決意表明のようなものが読み取れる。





その決意が宿ったかのようにこのアルバムはまぎれもない傑作となっている。

それは3人編成の頃のplentyも2人編成の頃のplentyも混ざり合っていながらも、
このアルバムが「plenty」としてしっかり成立している点からもわかる。

まるでバンドメンバーが1人減るという苦難の時もありながらも、
その変遷こそがまぎれもなく「plenty」なのだと言えるかのようだ。
だからこそのアルバムタイトルが「plenty」。納得。



















plentyの音楽は、どこまでもストレートに響くメロディと歌声が特徴。
とくにボーカルのボイスは、圧倒的にイノセント。あまりにも純粋さを持つボーカルは、時として悲痛に満ちているかのように聴こえる。


曲のタイトルをみればなんとなく想像できるが、
自分自身の弱さをひたすらに抉り出すかのような歌詞も必見。

前作のまでのアルバムでは、少年の”世界”への関わり方を中心とした観点で描かれていたが、
昨年のシングル以降はより大人びた視点での曲が増えた。






より社会的な自己を問うような曲が増えた。
それはメロディ自体にも表れていて、少年の世界に対する刺々しい心を表すかのようなメロディから、
(シングル曲は特に)より物腰やわらかなメロディへと変化した。

それでも前作からもみられた、心の甘さ・弱さ、”蒼さ”のようなものは健在だ。
これは前回の少年のような心から、年齢的な成長によって生ずる心とのギャップによる軋みからきているのかもしれない。


自己に悩む人にとって、寄り添うかのような音楽になりうるだろう。











個人的なオススメは、静かな夜中にひとりで聴く聴き方。
ボーカルが最も響くうえ、歌詞がより突き刺さってくる。

さらにラストの曲は、まさに夜中に聴くことを想定しているかのよう。
<朝が来るまでは 僕だけが正義>と痛切に唄うからだ。






















オススメ曲は、
3,4,5、6,9,10,12




3,4,6,9はそれぞれがシングル曲。
















3.「待ち合わせの途中」は個人的にシングル曲の中でもお気に入り。

ミドルテンポの曲だが、サビの盛り上がりは特筆すべきもの。

<誰かがそうどこかで 僕のこと待ってる><あの日が呼んでる 今はきっと待ち合わせの途中>
と、サビで歌われるが、
前回の2ndミニアルバムには無かった、希望と呼べるものがこの曲にはある。

決して光に満ち溢れているわけではないが、たしかにそこにあるという確信がこの曲にはある。
前に進む意志が心地よい。



待ち合わせの途中↓
http://www.youtube.com/watch?v=7CqoJmm2GsU













4.「人との距離のはかりかた」はタイトルからして衝撃的。

あまりにも心情が吐露される歌詞は、聴いていてグサグサと刺さってくる。
<言葉にするだけ無駄かもな でも言葉にしなくちゃだめだよな>

信じたくても信じきれない、人との距離のはかりかた。
それはきっと難しいものだが、はからなくてもいい存在「君」を得たいという悲痛な叫びが垣間見える。



人との距離のはかりかた↓
http://www.youtube.com/watch?v=H84hZXfs8Eg



6.「人間そっくり」も4.と同様に衝撃的。
このあたりは前作の流れを汲んでる感じも。


人間そっくり↓
http://www.youtube.com/watch?v=21qqm0oGqd0









9.「あいという」は単純なラブソングではなく、「あい(愛)」というものがなんなのかを問いかける曲だ。

これまでのシングルで少年という”自己”の外側へと、
だんだんと社会・他人へと近づいてきたイメージのあるplentyの歌詞だが、
最も最新のシングル曲であるこの「あいという」で最も他人へと近づいたイメージがある。

<君ならなんという ぼくならなんという 誰かはあいという>
こちらがわへとやさしくplentyは問いかける。


あいという↓
http://www.youtube.com/watch?v=76bAMBD-qYk













10.「砂のよう」は、穏やかな曲が多い本アルバムでも異色な存在の重厚なロックナンバー。

砂のように降り積もっていく現実に対して<もがけばもがくほど>、<あがけばあがくほど>埋もれていく。
しかし抵抗する意志があると叫ぶ。

サウンドはまるで痛烈な真実を表現しているかのように攻撃的。



砂のよう↓
http://www.youtube.com/watch?v=_wB4NA5kIFc







アルバムラストの曲、12.「蒼き日々」。

私個人としてはアルバム内のハイライトだ。


サウンド・サビの力強さと歌詞の力強さが秀逸。


<朝がくるまでは僕だけが正義>
<蒼き日の少年が追いかけていた 「僕だけの世界」に><果てはない、果てはないだろ>


このアルバムを、これまでのplentyの歩みそのものを総括するような曲として、
この曲は蒼さの極致にある曲だ。

下のリンクからぜひ聴いてみて。

蒼き日々↓
http://www.youtube.com/watch?v=36ZjQHrl-oo












plentyの新たな旅がここから始まる。

音楽として、
イノセントな蒼さを持ちつつ成長するというとてつもなく難しい芸当をやってくれることを期待したい。



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1. はじまりの吟

2. 普通の生活

3. 待ち合わせの途中

4. 人との距離のはかりかた

5. おりこうさん

6. 人間そっくり

7. 空が笑ってる

8. スローモーションピクチャー

9. あいという

10. 砂のよう

11. 風の吹く町

12. 蒼き日々